The previous night of the world revolution~T.D.~
――――――…こちらは、帝国騎士団。

『青薔薇連合会』幹部、アイズレンシア・ルーレヴァンツァからの連絡を受け。

急ぎ、帝国騎士団長オルタンスの執務室に向かうと。

「おい、オルタン…ス?」

「…」

我らが帝国騎士団長は、何やら真剣な眼差しで、手元を動かしていた。

…。

…帝国騎士団長が、真剣な眼差しで何かに熱中しているのだから。

きっと、非常に大事な職務に当たっているのだろう…と。

普通の人なら、そう思うだろう。

が、俺はそんなことに惑わされない。

一体、何度こいつに騙され、呆れさせられてきたか。

いい加減、俺も学習したぞ。

その証拠に、見てみろ。

オルタンスの手元にあるのは、ノートパソコンでも、重要な書類でもない。

何やら、布製品らしきものを弄っている。

…あいつ、今度は何をやってるんだ?

とりあえず、まともに仕事してないってことだけは分かる。

「おい。何やってるんだお前…。…裁縫か?」

帝国騎士団長が、手ずからお裁縫とは。

別に悪い趣味ではないと思うが、勤務中にやることではないだろう。

すると。

「惜しいな、アドルファス」

と、オルタンスが答えた。

あ?裁縫じゃないのか。

「俺は裁縫をしているんじゃない。…痛バッグを作ってるんだ」

「…」

俺はオルタンスに近寄り、その手元をよく見ると。

黒地の、エコバッグみたいな大きさの手提げ袋に。

側面に、びっしりと缶バッチがつけられ。

更に、ストラップやアクリルキーホルダーが、ジャラジャラと取り付けられていた。

…キモいんだけど、これは何だ?
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