The previous night of the world revolution~T.D.~
しかし、オルタンスの奴は、めちゃくちゃ嫌味を言われているにも関わらず。

「何か進展があったか?そろそろ最終段階だと思ってたが」

何事もなかったかのように、仕事の話を始めた。

こいつ…出来る。

『その最終段階についての話だよ』

「いつだ?」

『明日だ』



そろそろだとは思っていたが…まさか、そんな急に。

「分かった」

いやオルタンス、分かったじゃねぇだろ。

俺達だって、部隊を動かす用意ってものがある。

勝手に了承して良いのか?

いや、決定権はオルタンスにあるんだから、オルタンスが決めるのは結構なんだが。

それにしたって、いきなり明日とは。

「今日、今からです」と言われなかっただけ、猶予を与えてもらったと思うべきか?

「計画に変更は?」

『ないよ。そのままだ。『青薔薇連合会』が主導する。帝国騎士団は、予定通り道化を演じてくれれば良い』

…そうかい。

結局、お前が立てた計画通りって訳だな。アイズレンシア・ルーレヴァンツァ。

つくづく、敵に回したくない男だ。

元々敵なんだが。

『それと、一つ確認しておきたいことがあるんだけど』

「何だ?」

『ヒイラ・ディートハットの処分について』

…ヒイラ・ディートハットの処分。

…「処分」なんて言葉を使ってる時点で、『青薔薇連合会』はやる気満々のようだが…。

「こちらとしては、生け捕りにしたいところだな。ルチカ・ブランシェット同様、ルティス帝国の法律のもとに裁く」

『私は賛成しないね。彼は始末するべきだ』

そう言うだろうと思っていた。

『青薔薇連合会』なら。

別に、マフィアだからって人殺しに固執している訳ではない。

『あの男は、ルチカ・ブランシェットとは違う。ヒイラ・ディートハットには野望がある。彼には、明確に国家に反逆しようという強い意志がある』

その通りだ。

『天の光教』のルチカ・ブランシェットの目的は、革命ではなかった。

彼女が望んだのは、自分の信じる『天の光教』を広めたかっただけ。

その結果国政が変わるなら良し、それこそ神の御心のままに、という主義だった。

それに、何より…。

『そしてヒイラ・ディートハットは、シェルドニア王国の秘密を…『白亜の塔』の情報を知っている』

…そう。その点だ。

さすが、よく分かっていらっしゃる。

『あの研究に手を出している。あれは危険だ。私達以外で『白亜の塔』の存在を知る者を、決してルティス帝国に残してはいけない』

…実に、マフィア的な考えだ。

少しでも不穏分子になり得る人物がいたら、すぐさま切り捨てる。
 
その火種が、大きな火事になる前に。
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