The previous night of the world revolution~T.D.~
どうしてこんなことに。

俺は昔から、毎日そう考える。

一日に一度は、必ず。

妹が死んだとき。

母が死んだとき。

父が死んだとき。

家族を失った後、貧しさ故の理不尽な目に遭う度。

俺は、そう考えてきた。

どうしてこんなことに。

俺が何をしたって言うんだ?何も悪いことなんかしてない。

それなのに俺は、理不尽な目に遭い、苦しい思いをし続けてきた。

その一方で。

王族や貴族、そして、そんな金持ちに媚びを売ることで富を得ている、一部の裕福な連中はどうだ?

俺が経験した苦労なんて、知りもせず。

貧しさがどういうものか、知りもせず。

永遠に知ることもなく生まれ、育ち、死んでいくのだ。

学校の、道徳の授業で習わなかったか?

人間は、皆平等なのだと。

人の命に貴賎はないのだと。

しかし現実はどうだ?

その日何を食べようか、と贅沢な悩みを抱えている奴がいれば。

その日食べるものはあるのか、と頭を悩ませる奴がいる。

腹いっぱいだからって、残っている食べ物を捨てる奴がいれば。

犬の餌のようなものを食べて、それでも腹を空かしている奴がいる。

そんな現実があるのに、何が平等だ?

治るはずの怪我や病で死んでいった、俺の家族は?

人の命に貴賎はないんじゃないのか?

綺麗事ばかり並べて、現実は何も伴っていない。

それなのに、誰もそんな現実に目を向けない。

自分の視界にさえ入らなければ、いないも同然なのだ。

この国は腐っている。

この国の国民達は、ほぼ全員が腐っているのだ。

自分さえ良ければそれで良い。

苦しんでいる人がいても、自分の視界に入らなければ、それはいないのと一緒だから。

あまりにも理不尽だ。

そうして目を逸らされた俺達のような存在は、何処に救いを求めたら良い?

誰もこちらを顧みない。誰も手を差し伸べてくれない。

奴らの綺麗事という蓋の下で、誰も見ていないうちに押し潰されて、なかったことにされる。

それが、今のルティス帝国の現実なのだ。

どうしてこんなことに?

許せなかった。

心から、この国の現状が許せなかった。

だから俺は、『天の光教』に入った。
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