The previous night of the world revolution~T.D.~
あの頃、ルチカ・ブランシェットは眩しかった。

彼女は、俺の言いたいこと、考えていることを、全部口に出して言ってくれた。

人間は皆平等だと。

国が得た富は、等しく国民に分配しなくてはならないと。

王族も貴族も、この国には必要ない。

皆同じ人間なのだから。序列をつけて、区別するのは間違っている。

その通りだと思った。

同じルティス帝国に生まれた者同士、女王だろうが、貧民街の孤児だろうが、命の価値は同じのはずだ。

まぁ、ルチカ教祖が説いていた、神への信仰云々は、俺にとってはどうでも良かったが。

神は何もしてくれない。俺達を飢えさせたのも、苦しめたのも、それは神の仕業ではなく、人間の仕業だから。

それでも俺は、『天の光教』に賛同していた。

その為に、デモを行うのも賛成だった。

俺達はずっと抑圧されてきたのだから、無視されてきたのだから。

派手なことをしなければ、そもそも誰だって、こちらに目を向けてはくれないじゃないか。

だから、ルチカ教祖のやり方は間違っていなかった。

間違っていなかったからこそ、国民達も、ついてきた。

国民達は、ルチカ教祖の訴えによって、ようやくこの国の現実に気づいたのだ。

ルティス帝国の今の体制は間違ってる。皆が平等に暮らせる社会ではないと。

ようやく皆、俺達の方を向いてくれたのだと思った。

これから『天の光教』によって、ルティス帝国は良い方に変わっていくのだと思った。

でも、否定された。

今、ルチカ教祖は何処にいる?牢屋の中だ。

誰が彼女をそんなところに入れた?帝国騎士団だ。

王侯貴族に縋り、媚びへつらい、権力を欲しいままにする連中が、またしても。

俺達の必死の叫びを、踏みにじったのだ。

こんな横暴が、どうして許されて然るべきだろう?

『天の光教』が潰され、ルチカ教祖がいなくなった後。

国民達は、全て忘れてしまった。

やっと、俺達の方を向いてくれたのに。

帝国騎士団がルチカ教祖を捕らえ、『天の光教』がなくなった途端。

つまり、俺達の叫びが、抵抗が、見えなくなった途端に。

彼らはまた、無関心に戻ってしまったのだ。

どうしてこんなことに?

そのとき、俺は思ったのだ。

この国の国民達は、帝国騎士団の連中と同じなのだ。

自分さえ良ければそれで良い、そんな腐った考えを植え付けられた、帝国騎士団の奴隷なのだと。
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