The previous night of the world revolution~T.D.~
今になって思えば。

ルチカ教祖は、やり方が甘過ぎたのだ。

彼女はあくまで、言葉によって人々の意識を変えようとしていた。

そして、「神」という不完全な存在で、人々をまとめようとしていた。

でも、そんな生易しいやり方じゃ駄目なのだ。

人間は目に見えるものしか信じない。

信仰心も、言葉も、人間は信じない。

行動を起こし、腐った奴らのその目に、見せつけてやらなければ。

そうしなければ、奴らは分からない。

もっと分かりやすく、もっと過激な方法で。

この国が、いかに間違ってるか、教えなければいけない。

でも、今国民達が無関心なのは、国民達が悪い訳じゃない。

彼らは長年によって、植え付けられてきたのだ。

生まれたときから、王侯貴族が権威を振るう国で育てられ。

特権階級ばかりが優遇され、自分達は搾取される側であり。

それが当然で、当たり前のことであると信じ込まされてきた。

疑うことも知らず、それが世の中の摂理であると。

そう。洗脳されてきたのだ。

自分さえ良ければそれで良い、苦しんでいる人達は無視して良い。そう思うように洗脳されてきた。

『天の光教』が瓦解するまで、俺はそのことに気づかなかった。

俺もまた、国によって洗脳されてきたのだ。

幸い俺は、『天の光教』事件によって、洗脳から解かれた。

そしてルティス帝国には、僅かながら、俺と同じように洗脳から解かれた者達がいる。

それは俺と同じく、『天の光教』の残党達であり、あるいは各地で細々と活動を続けていた、共産主義組織に所属する人々だった。

彼らだけは、自力で洗脳を解き、自分達の足で立ち上がり。

この国の間違った体制を、何とか正そうとする、勇気ある人々だった。

それなのに彼らは、蔑まれ、虐げられ、無視されている。

だから俺は、『帝国の光』を起ち上げたのだ。
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