The previous night of the world revolution~T.D.~
…?

これは、計画にない展開だ。

何故止めた?ルリシヤ。

「何だ、同志ルニキス…」

「今一度、よく考えて欲しい」

…何を?

「これは、人を洗脳する装置だ。望もうと望むまいと、人々を煽動し、無理矢理言うことを聞かせる為の装置だ」

…。

…そうですね。

「間違いなくこれは、倫理に反した道具だ。人道に反した道具だ。本当に、これが必要なのか?これがなければ、お前の望みは叶わないのか?」

「…何を言ってる?」

…あぁ。

分かってしまった。ルリシヤが、何を言いたいのか。

やっぱり、ルリシヤは…。

「…今なら、まだ引き返せる。やり直すことも出来る。禁忌に触れる前に、正しい道に戻れるんだ」

ヒイラを…かつての、自分の親友に重ねているんですね。

この道を辿れば、何が待っているのか知っているから。

ルリシヤの言葉が届けば。

最後の最後で、ヒイラが一歩を踏み留まれば。

まだ、やり直すことが出来るかもしれない…そんな一縷の望みを残していた。

しかし。

「何を言ってるんだ…!この状況が分からないのか?何で今更、倫理や道徳に縛られる必要があるんだ!」

…届かない。

ルリシヤの言葉は、またしても。

またしても…届かなかった。

「…」

仮面の下に隠れた、今の彼の心情を思うと。

どうにもやりきれなくて、気の毒で堪らないが。

それでも、もうどうしようもない。

ヒイラは、そちらを選んでしまったのだから。

破滅への道を。
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