The previous night of the world revolution~T.D.~
「…そうか」

と、ルリシヤは呟いた。

彼が感傷に浸ったのは、一瞬だけだった。

「ならば仕方ない。お見せしよう、俺達が作った、『光の灯台』の勇姿を」

宜しくお願いします。

ずっと、このときを待ち侘びていた。

外にいる「皆」に、見せてあげられないのが残念だ。

仕方ないから、こっそり録画して、後で見せてあげよう。

「早速スイッチを入れてみよう、さぁ」

ルリシヤは、ヒイラに赤いボタンのついたスイッチを渡した。

『光の灯台』の、起動ボタンだ。

「お前が押すんだ。これは、お前の、お前だけのものだ」

「…俺の…」

ヒイラは、手のひらの上のボタンを、恍惚として見つめた。

これがあれば。

これさえあれば、自分の望みは、計画は、達成される。

夢だった、ルティス帝国の政変も叶う。

それだけではない。

人々を洗脳出来るのだ。気に入った人物だけ傍に置き、気に入らない奴は、全員奴隷にしてしまえる。

そんな、夢のような装置。

その使用権を持つのは、他でもない、自分だけ。

夢が叶った、今の気分はどうだ?

数分後には塵に帰るのだから、今のうちに、充分味わっておくと良い。

勝利の美酒、って奴を。

「…これは、ルティス帝国の大きな歴史の転換点だ」

なんか、ヒイラが語り始めたぞ。

「この瞬間を機に、ルティス帝国は変わる。誰もが平等で、誰もが対等に扱われる理想郷に…」

ポエムを語るな。

笑いそうになるから、もう早くボタン押せよ。

「…さぁ、ここから始めよう。新しいルティス帝国の、第一歩だ!」

最高に格好良くて、最高に滑稽な決め台詞と共に。

ヒイラは、赤いボタンを押し込んだ。




…瞬間。

『光の灯台』のてっぺんから、パァンッ!と鋭い音がした。
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