The previous night of the world revolution~T.D.~
帝国騎士団の、突然の介入により。

『帝国の光』本部の周辺で、群れを為していた『表党』の党員達は、大わらわだった。

「何でここに帝国騎士団が!?」

「俺達は何もしてないぞ!」

「ヒイラだ!中にいるヒイラを捕まえろ!」

まさに阿鼻叫喚。

帝国騎士団は、参考人として『表党』の党員を連行するらしいが。

あくまで任意同行なので、強制力はない。

平和的に、「同行してもらいたい」と頼んでいるのだが、しかし『帝国の光』党員達にとっては、それが強制連行だと思いこんでいるようで。

無駄に暴れ、抵抗するものだから、余計に拗れる。

こうなると帝国騎士団の方も、公務執行妨害ということで、無理矢理抑えつけて手錠をかけずにはいられない。

それを見た他の党員が、更に怯えを加速させ、余計に暴れ、騒ぎ立てる。

その悪循環だ。

帝国騎士団は、必死に群衆に落ち着くよう、逮捕しに来た訳ではなく、建物の中を捜査させて欲しいだけだ、と拡声器で訴えていたが。

まぁ、そんなことに耳を貸す余裕のある党員は、誰もいない。

帝国騎士団=逮捕される、とパニックを起こしている。

そのパニックを起こした群衆の中を掻き分けるように、俺は前に進んだ。

こんなところで、足止めを食らっている場合じゃないのだ。

すると。

「おっ、師匠嫁のルルシーさんじゃないですか」

「…!ルーチェス!」

俺は、群集の中に見知った顔を見つけた。

誰が嫁だって?

「お前大丈夫か?こんな騒ぎの中…」

「その騒ぎの中に、無理矢理突っ込んでくるあなたも大概ですけどね」

それは言うな。

「俺の役目なんだ。見れば分かるだろ」

「…成程」

納得してくれたようで何より。

「ここにいるのはお前だけか?シュノは?」

シュノも、『表党』の党員として、この群衆に紛れ込んでいるはずだが?

「さっきまで一緒にいたんですが、この騒ぎではぐれちゃいましてね。全く、この欝陶しい人混み、両剣で一掃したいですよ」

お前、間違いなく師匠の血を継いでるな。

それと、そんなことしたらシュノまで巻き添えになるから、やめろ。

「でも、向かう先はシュノさんも僕も、あなたも一緒です」

「…奴は何処にいる?」

「『光の灯台』があるのは地下だと聞いています。だから、地下に」

そうか。地下か。

分かった。

「僕もシュノさんも地下に行くつもりなんですが、どうにもこのパニックだと難しいですね。第一、地下に向かうエレベーター、『裏党』の連中が占拠しちゃったらしくて」

「…籠城でもするつもりか?」

「さて。恐らくは、大事なご党首を逃がす為の、時間稼ぎかと」

…ヒイラを逃がす為の、時間稼ぎ。

今回は、そんなことはどうでも良い。逃げたいなら、勝手に逃げてくれ。

それよりも。
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