The previous night of the world revolution~T.D.~
…の、だが。

「凄いことになってるな、おい…!」 

「ライブ会場みたいですね」

お前は、何をわくわくしてるんだ?

『帝国の光』所有のビルのエントランスには、帝国騎士団から逃げて駆け込んできた党員達で、埋め尽くされていた。

こんなんじゃ、とてもじゃないが地下には行けない。

パニックを起こした群衆はエレベーターに群がり、動かないエレベーターのボタンを必死に押したり、扉を抉じ開けようとしていた。

そんなことしなくても、大人しく出ていけば、帝国騎士団も見逃してくれるっていうのに。

だが、冷静に話をして、聞ける状態ではない。

こうしている間にも、地下では…。

そう思うと、俺はいてもたってもいられなくなった。

「くそっ。こうなったら…こいつらを押し退けてでも…」

「ちょっと待って下さい。ルルシーさん」

と、ルーチェス。

この人混みで、よくはぐれずにここまで来れたものだ。

シュノは無事だろうか?

探したいところだが、そんな余裕もない。

「拳銃持ってます?」

「拳銃…?持ってるが、でもこの中で使ったら、党員に当たるだろ」

「大丈夫なんで、ちょっと貸してください」

は?

何が大丈夫なのかと思ったら、気づいたときには、ルーチェスは俺のホルスターから拳銃を抜き取っていた。

おい、こら。

「あ、済みません腰回りに触っちゃって。ルルシーさんの身体、特に腰回りは師匠に所有権があるのは分かってるんですが、如何せん緊急事態なので、」

「良いから、やるなら早くしろ。俺の腰は俺のものだ馬鹿」

お前まで、ルリシヤみたいなこと言うな。

俺の身体は俺のものだよ。

するとルーチェスは、空に向けて拳銃の引き金を引いた。

俺にとっては聞き慣れた、しかし何も知らない一般人である、『帝国の光』党員達にとって。

その一発は、氷水を浴びたかのような衝撃だった。

更にルーチェスは、二発、三発と続けて撃ち。

そして叫んだ。

「『裏党』だ!『裏党』の党員が、武器を出してきたぞ!逃げろ!今すぐ外に逃げろ!!」

…!

勿論、ルーチェスの口から出任せなのは分かっているが。

それでも、何も知らず、ただ帝国騎士団に逮捕されることに怯え、建物の中に引きこもっていた連中は。

今度は、後ろから『裏党』の党員に粛清される恐怖に晒され。

先程の拳銃の発砲音もあり、本当だと信じて、今度は一気に、外に向かって走り出した。

な…何ということを。

「…今ので、確実に怪我人が出るぞ」

「今更でしょう?集団パニックが起きている以上、既に怪我人は出てますよ」

何なら、死者が出ていてもおかしくないかもな。

人が人を押し潰し、突き飛ばし、我先にと逃げていっている。

パニックを起こした群衆の、典型みたいな事態だ。

外では帝国騎士団が抑えているから、大丈夫だとは思うが…。

…それより。
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