The previous night of the world revolution~T.D.~
あまりの土埃に、俺は手で顔を覆った。

と、同時に。

瓦礫と共に、俺とルーチェスは、エントランスの下にあった空間に…地下に…落下した。

これぞ、ルレイア式「ノック」。

無事、弟子にも直伝されているようで。

「ふぅ、上手く落ちましたね。お邪魔しまーす」

お邪魔しますじゃねぇだろ。

ルレイアの上に落っこちたら大変だな、と思っていたが。

瓦礫を押し退け、土埃を払うと。

どうやら俺とルーチェスは、武器が山積みにされた、地下武器庫の上に着地したようだった。

「ほう、こんなに武器がたくさん…。…うわ、粗悪品ばっかじゃないですか」

ルーチェスが、(俺達が天井壊して落下したせいで)その辺に散らばった拳銃を一丁、手に取って言った。

…全くだな。

こんな一昔も二昔も前の武器を買う為に。

人々を騙して、金を集めていた訳だ。

マフィアの俺が言えた義理じゃないが、ろくでもない男だ。

あの、ヒイラ・ディートハットという男は。

「でもまぁ、ないよりはマシですね。適当にもらっときましょう」

ルーチェスは、武器庫の棚に押し込められていた、古ぼけた剣を持ち上げた。

「さっきの玩具、案の定あっさり壊れちゃいましたし」

「…」

俺は、ルーチェスが床に放った、帝国騎士団の剣を見下ろした。

ルレイア直伝の「ノック」のせいで、あんなに立派だった剣が、ひしゃげて折れ曲がり。
 
刀身の半分は砕け散り、残った部分もボロボロで、触ったら崩れそう。

…ひでぇ…。

それを思うと、いつも俺の相棒が使っている、あの鎌。

あれだけ派手なダイナミック入室を果たしても、原型を保ってるって、かなり凄いことなのでは?

毎回あれを用意している『オプスキュリテ』は、一体どんな魔法を使っているのだか…。

…いや、そんなことは、今はどうでも良いな。

「誰だ!?」
 
「何があった!?」

騒ぎを聞きつけた(天井壊されたんだから、当たり前だが)『裏党』の党員達が、武器庫に駆けつけてきた。

…来たな。

粗悪な武器で武装し、こちらに銃口を向けている。

数は…ざっと20名近く。

…。

…悪いが、俺はご丁寧に、お前達の相手をする訳にはいかないのだ。

だから。

「…ルーチェス」

「はい」

「ここ、頼めるか」

素人とはいえ、相手は武装しており。

ルーチェスは、いつもの使い慣れた武器を持っていない。

余裕があれば、ルーチェスの加勢をしてやりたかったが…。

「え?誰に物言ってる感じですか?」

…。

良かった。

「…心配は、無用なようだな」

「早く行ってください」

「…ありがとう。行ってくる」

「…ふふ。愛する夫のもとに駆けつける嫁…。良いシチュエーションですね」

下衆か。

夫でもないし嫁でもないから!と、否定しておきたいところだったが。

今は、そんな時間さえも惜しかった。

俺は、武装した『裏党』の連中の隙間を潜り抜けるようにして、突破した。

「!待て!」

「はいはい、あなた方の相手は僕ですからね」

俺を追撃しようとした党員を、ルーチェスが引き付けて倒した。

この場は、ルーチェスに任せる。

俺は、自分の向かうべきところに向かう。
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