The previous night of the world revolution~T.D.~
「無力化するだけなら、以前作ったキャロライナリーパー・カラーボールでも良かったんだが。あれを作成しながら、俺は気づいたんだ」

なんか語り始めてるぞ。

皆、それどころじゃなく吐きまくってるけど。

「俺がいくら辛いものを作ろうと、この世には、辛いものが大好きな人もいる」

それは…まぁ。

そうだろうけど。

「よって、いつかキャロライナリーパー・カラーボールを投げても、むしろご褒美!美味しい!って言う、猛者が現れるんじゃないかと思ってな」

いるのか?

そいつ、本当に人間か?

いや、世界は広いから、もしかしたら舌が馬鹿になって。

ルリシヤ特製キャロライナリーパーでも、余裕で耐えられる、って人も存在…。

…するのか?

「そこで俺は、発想を変えてみた。辛いものが得意な人はいても、生臭いものが得意な人はいないだろう、と」

…どうしてそうなるんだよ。

「そこで開発したのが、今諸君らが味わっているそれだ」

成程。

「原材料を聞きたいか?まずは腐った卵に、野鳥の生き血をブレンドし、そこに、一ヶ月常温放置した生魚をすり潰し…」

あーはいはい、放送禁止用語、放送禁止用語。

良いか、良い子の皆。

ルリシヤの真似だけは、絶対するなよ。

友達なくすぞ?

もう、その原材料を聞いてるだけで吐きそうだよ。

「そして、そこにチョメチョメして、丁寧にチョメチョメして…出来上がったのが、それだ」

最低だよ。

「何分、試す相手がいなくて困っていたところだからな。今回が初使用なんだ。存分に味わってくれているようで、何よりだ」

と、満足そうなルリシヤ。

おい、ヒイラ・ディートハット。

お前が信じていた同志、ある意味『光の灯台』より恐ろしいものを、こっそり製造していたらしいぞ。

と、まぁそんな訳で。

ルリシヤを前に、いくら武装していようが無駄。

あの生臭いボールを食らわされた、憐れな『裏党』の連中は、まだ床で悶えていた。
 
…なんか、気の毒になってきた。

そこに。

「…ん?そこにいるのはルルシー先輩か」

「ルリシヤ…」

「久し振りだな。元気だったか?」

…それはこっちの台詞だろ、と。

言いたかったが、俺とルリシヤを挟むように、床にゲーゲー嘔吐してる奴らがいるから、なんか会話する気になれない。

「それと、ルルシー先輩の『お目当て』はこの奥だ」

「…!」

「ここはあまりに手薄過ぎる。恐らく、奥に集中してるんだろう。今から俺も、加勢に行こうとしていたところだが…」

「…その必要はない」

「そうだな」

加勢に行くのは、ルリシヤじゃない。

俺だ。

だから。

「ルリシヤ…」

「分かってる。早速、新手が来たようだ」

俺が走ってきた方向から、何人かの足音が聞こえてきていた。

『裏党』の援軍のようだ。

「…頼む」

「任せてくれ。次はまたしても新作、『レモン1000個分のレモン★スーパーボール』を味わわせてやろう」

それ、ただのレモンでは?

聞いてるだけで、口が酸っぱくなってきたので。

俺はルリシヤにここを任せ、更に奥に進んだ。
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