The previous night of the world revolution~T.D.~
「ヒイラは確実に殺しておかないといけない。誰か、あいつの死体を見た者はいるのか?」

「死体は見てないね。どうやら、彼は側近を二、三人連れて逃亡したらしい」

「とっ…!」

目を見開くルルシー。

そういや、あの地下乱闘で、ヒイラはいの一番に逃げていったな。

全く、逃げ足の早い奴だよ。

「逃したら駄目だろ!こんな呑気なことしてる場合じゃない。今すぐヒイラを捜索しないと…」

「大丈夫だよ、ルルシー」

答えるアイズ。

「何が大丈夫なんだ?あいつを野放しにしておいたら、また…」

「野放しにはしてない。尾行をつけてる」

「尾行…?」

「彼と、『光の灯台』開発チームのメンバーの処理については、気にしなくて良い。既に手は打ってあるんだ」

「…」

自信満々に言うアイズに、黙り込むルルシー。

アイズがそう言うなら…といったところか。

「それじゃあ…あの、シェルドニアから来た、サシャ・バールレンは?あいつは何処に消えた?」

「あぁ、あの若ハゲですか?」

「わか…。いや、まぁ呼び方は何でも良いが…。あいつは何処に行った?」

「俺とルリシヤが反逆を起こした途端、腰抜かしたらしくて、研究室で蹲ってましたよ」

「…」

「その後どうなったのかは知りません」

「…知っとけよ…」

だって、どうでも良かったし。

あいつに、土壇場で逃げ出す度胸がないことは分かってたし。

それに何より、その後すぐルルシーが合流してくれて、死神モードに移行してたから。

若ハゲ博士のことなんて、眼中になかった。

すると。

「大丈夫。サシャ・バールレンについては、地下に突入した帝国騎士団が、身柄を確保したそうだよ」

さすがアイズ、情報が早い。

「同時に、研究室に残されていた開発資料も、回収しているみたいだね」

「じゃ、全部支度が整い次第、持ち出した開発資料を括り付けて、シェルドニアに強制送還、ってところですか」

「そうなるね」

帰ったところで、奴に何が待っているかと思うと。

…ざまぁの一言に尽きるな。

これも身から出た錆。存分に罰を受けてくれ。

「つまり、俺達は何も心配することなく、今夜の祝宴を楽しめば良いってことですね」

「そういうことだね」

「やったぜ!ポテパ最高!」

アリューシャのテンションがマックス。

いやはや、なんと平和なことか。

素晴らしい、いつもの日常よ。

「それじゃ、私は帝国騎士団の最後の報告を聞きに行ってくるよ。ちゃんと、報酬ももらわなきゃならないしね」

と、アイズ。

「アイ公を一人にはしねぇぜ!アリューシャも行く!」

そんなアイズに、くっついていくアリューシャ。

「じゃあ私は、一足先に祝宴の準備をしながら待ってるわ」

シュノさんは、『青薔薇連合会』本部に残るらしい。

そして。

「俺は、『帝国の光』のアパートに残してきた、私物を取りに行ってくるとするか」

ルリシヤが、そう言った。

そういえばそうだな。

「俺も。『帝国の光』の社宅に取りに行くものはないですが、最初に住んでたマンションには、下僕とか色々残してますし。取りに行かないといけませんね」

「下僕って…。モノ扱いするんじゃない。それと、俺もついていくぞ」

え?

「ルルシーも来てくれるんですか?」

「当たり前だ。お前が散々迷惑をかけたであろうルーシッドに、改めて謝罪しないといけないからな」

ちょっと。何その言い方。

「俺は何も迷惑かけてないですよ?ちゃんと協調性を持って…」

「あー、はいはい。分かってる分かってる」

「信じてくださいよ〜!」

…それにしても。

ルーシッドと言えば、あいつ、『帝国の光』突入には加わってなかったようだけど。

今頃、何やってるんだろうな?
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