The previous night of the world revolution~T.D.~
「箱庭帝国だ」

「は…箱庭帝国に…?」

一体、どんな名案が出てくるのかと思ったら。

実に下らない、かつ苦し紛れの迷案で、がっかりした。

「あの国なら、国境の守りも薄い。それに、昔はあの国だって共産主義国家だったんだ。俺達の理念も、認めてくれるはずだ」

「…で、ですが…」

いよいよ、馬鹿が極まってきたなぁ。

「箱庭帝国の代表に、『光の灯台』についての情報を売るんだ。そうすれば箱庭帝国は、『光の灯台』を造るはず」

その仮定を現実のものにするには、四つの課題があるな。

一つは、どうやって箱庭帝国に侵入するのか。

二つは、どうやって箱庭帝国の代表、『青薔薇委員会』のルアリスとかいう人に会えるのか。

三つは、そのルアリスが、『光の灯台』とやらの情報を信じるのか。

四つは、『光の灯台』を信じたとして、その製作への着手に合意してくれるのか。

問題が山積みだ。

それなのに、ヒイラの夢は壮大だった。

「箱庭帝国は、諸外国からルティス帝国の属国扱いされてるんだ。常々ルティス帝国のことは、疎ましく思ってるはずだ」

本当にそうか?

課題が一つ追加されたな。

五つ、箱庭帝国の代表が、ルティス帝国とを本当に疎んでいるのか。

「『光の灯台』が完成すれば、箱庭帝国のみならず、ルティス帝国にも侵攻することが出来るんだ。箱庭帝国にとっても、悪い話じゃないはずだ。そうすれば、俺達も安全にルティス帝国に帰国出来るはず」

「…」

かつての指導者の、あまりの豹変ぶりに。

僅かに彼らについてきた仲間達は、もう返す言葉もないようだった。

課題が、更にどっさり増えたな。

六つ、箱庭帝国の技術で、『光の灯台』は本当に完成するのか。

七つ、完成したとして、箱庭帝国に、ルティス帝国を侵攻する気があるのか。

八つ、侵攻したところで、箱庭帝国はルティス帝国に勝利することが出来るのか。

これだけの課題を、全てクリアすることが可能だと、本気で思ってるんだろうか。

そうとでも思わなければ、正気を保っていられないだけなのかもしれない。

…ともかく。

こんな馬鹿げた計画しか出てこないということは、もうヒイラに、隠し玉は何もないということだ。

最早、逃げる以外に道はないと。

なら、これ以上…。

…下らない壮大な「夢」に、付き合う必要はないな。

「そうと決まれば、今すぐ箱庭帝国に…」

「それは無理だよ」




…まず、一人。

『光の灯台』開発チームのメンバーの首が、音もなく胴体から切り離された。
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