The previous night of the world revolution~T.D.~
「ふー、やっと終わったな」

バレーボールを終えて、体育館から帰りながら、エリアスが話しかけてきて。

そして、ようやく思い出した。

そうだ。俺学校の先生になりに来たんじゃないんだった。

スパイしに来たんだった。

危ねー。危うく忘れるところだったよ。

「昼、どうする?弁当?」

「あ、いえ」

大学の敷地内で営業されている、コンビニかパン屋で買おうかなと。

すると、エリアスがこう提案してきた。

「だったら、一緒に学食行こうぜ」

学食。

成程、そういうものがあるのか。

大学の定番だな。

帝国騎士官学校時代も、学校側が提供してくれる食事を食べていたけれど。

あれは学食と言うより給食で、それ以外に食事出来る場所も、選択肢もなかった。

全寮制の挙げ句、休日でさえ許可なく外出は禁じられていたからな。

食事制限による体格作りも、あの学校の目的の一つだったから、仕方ないと言えば仕方ないが。

その点、大学は良い。

家から弁当を持ってきても良いし、構内にあるコンビニやパン屋で買っても良いし。

エリアスが言ったように、学食に言っても良いし。

何なら大学の外に出て、近所にある喫茶店やファミレスに入って、ランチをしてきても良い。

昼食の選択肢が実にフリーダムで、そこは良いところだと思う。

それに。

同じサークルで、同じ学部の仲間同士。

食事によって親交を深められるなら、悪くない。

更に、エリアスは。

「他にも何人か誘ったんだよ。良いだろ?」

「えぇ、良いですよ」

どうやら彼は、身近にいる人間なら、大抵誰でも声をかけるタイプらしいな。

友達作るのが上手いタイプ。

そんなエリアスを、最初に友人に出来たのは、スパイとしては上々。

エリアスを通して、横の繋がりが広がる訳だからな。

ましてや、食事時に、テーブルにつく人間が増えれば増えるほど。

少しでも、多くの情報を耳にすることが出来る。

これは僥倖。

やっぱり、俺の普段の行いかな。

内心ほくそ笑みながら、俺はエリアスとその仲間達についていった。

彼らも同じ学部の人間で、お互いに自己紹介をした。

いちいち名前を覚えるのが面倒臭いので、まぁ仮名としてABCとでも言っておこう。

本日一緒に昼食を摂るメンバーは、ABC三人と、俺とエリアス、この五人。

最初の情報収集としては、充分の出来。

そして。

いざ、辿り着いた学食では。

「おぉ…広いなぁ」

まず最初に、Aが感嘆の声をあげた。

俺も、同じ感想を抱いた。

どうしても俺は、比較対象が帝国騎士官学校のそれになってしまうのだが。

あの腐れ学校の食堂の、軽く三倍は広い建物だった。
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