The previous night of the world revolution~T.D.~
「あ、それと。一応箱庭帝国も、何だかんだ巻き込んでしまったことに変わりはないので、事件の内容端折って、詳細送るってアイズ総長が言ってました」

「あ、はい…ありがとうございます」

アイズ殿。そこまで気を遣ってくださらなくて良いのに。

でも、正直有り難い。

国内の反政府組織に対する対応…。今のところ、幸いにも新生箱庭帝国には縁がないが。

他ならぬ自分が、旧体制を打破した、革命軍のリーダーだったもので。

今後、国政に不満を持った者達が集まって、内乱のような事態に発展しかねない保証はない。

そのときの参考の為にも、事件の詳細を教えてもらえるのは助かる。

巻き込まれたと言っても、俺がしたことは精々、ルーチェス殿とセカイ殿を預かっていたくらいなのだが…。

「それとこちらは、個人的なお礼です。しばらく僕と、それにセカイさんがお世話になりましたしね」

ルーチェス殿は、片手に持った花束の中から、軽く膨らんだ封筒をひょいっ、と投げてきた。

反射的にキャッチしてしまったが。

「え、いや。こんなもの受け取れません」

決して、そんなつもりでお預かりしていた訳では。

「あぁ、気にしないでください。僕がそうしたいからしてるだけで」

「で、でも」

「断るなら、受け取るまで国際郵便で送り続けますけど」

最早嫌がらせのレベル。

そんな風に言われたら、受け取らざるを得ないじゃないか。

本当に…そんなつもりではなかったんだけどなぁ…。

何だかもやもやするが、受け取るまで送ると言われたら、仕方なく受け取らざるを得ない。

「…ありがとうございます」

「いえいえ、とんでもない。ルレイア師匠に言われたんですよ」

え?ルレイア殿に?

「あそこの娘は、将来『美味しく』育つに違いないので、今のうちに媚売っとくべきですよ、って。そんな訳なので、その節は宜しくお願いします」

冗談じゃないんですけど。

やっぱりこれ、突き返して良いだろうか?

何が宜しくなんだ?

「えー、ルーチェス君ロリコン?ロリコンなの?」

ほら、セカイ殿もおこっ、

「知らなかった〜!じゃあ今度、ロリっ子プレイして遊ぼっか?」

「良い考えですね。とても興味をそそられます」

怒ってくださいよ。

どれだけ寛容なんですか。

と言うか、うちの娘の未来が危ない。

どうしたら良いんだ…。いっそ他国に亡命させるか…?

などと、死神とその弟子の毒牙から、どうやって娘を守ろうか考えていると。

「それじゃあ、僕達は帰りますね」

「…え?あ、はい…」

「さぁセカイさん。掴まってください」

「はーい!バイバイルアリス君!またね!」

「はい…またね…」

セカイ殿は、笑顔でルーチェス殿の花束を受け取り、そしてルーチェス殿にしがみつく。

と同時に、ワイヤーがエレベーターみたいに、音を立ててヘリに戻っていった。

…誰が動かしてるんだ、あれ…。

墜落しやしないかと、ハラハラしながら見上げていたが。

二人共、無事にヘリに乗り込み。

「それじゃ、ルティス帝国に向けて、快適な空の旅をお楽しみください」

「やったー!ヘリに乗るの初めて!レッツゴー!」

まるで、直前に本を一冊読んだだけとは思えない、悠々とした操縦で。

ルーチェス殿は白ヘリを動かし、空の彼方に消えていった。

…。

…あの本、そんなに万能なんなら…箱庭帝国でも、採用しようかな?
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