The previous night of the world revolution~T.D.~
さて、ルーチェスも揃ったので。

「では、改めて俺の新作マジックをお披露目するとしようか」

「…いや、乾杯が先じゃね?」

と、いうルルシーのツッコミは無視され。

「まずはこのステッキ」

ルリシヤは、一見何の変哲もない、黒いステッキを取り出した。

まず、そのステッキを何処に隠していたのかという謎も、ある種のマジックだな。

そして、そのステッキをくるりと回し、ステッキの先端に指を突っ込むと。

そこから、大きな赤い布を引っ張り出した。

「おぉぉぉ!あれ仕込んでたの!?仕込んでたのか!?」

ミートパイにパクつきながら、興味津々のアリューシャ。

仕込んでたんでしょうねぇ。

「さぁ、よく見てくれ。何の変哲もない、ただの布だろう?」

ルリシヤは、赤い布を裏表にして、ただの布であることをアピール。

闘牛士が持ってるあれみたい。

「しかしこれに、ルリシヤ・マジックをかけると…」

ひらり、と赤い布を椅子の上に被せ、パチン、と指を鳴らし。

布をサッと取り除くと、その椅子の上には、

「ぬぉぉぉぉ!なんか出てきた!」

何もなかったはずの椅子に、ゴスロリドレスを着たクマのぬいぐるみが現れた。

これには、アリューシャも大興奮。

何処から出したんだろうなぁ。

そして、ぬいぐるみの着ている服に、素晴らしいセンスを感じる。

「さて、このぬいぐるみは、シュノ先輩にあげよう」

「あ、ありがとう」

ぬいぐるみを、シュノさんに渡してから。

「ではお次のマジックだ。使うのは、これ」

取り出したのは、豚の貯金箱。

「ちなみに、中身は空っぽだ。ルルシー先輩、確認してみてくれ」

「え、俺が?」

貯金箱を手渡されたルルシーは、疑わしそうに貯金箱を見つめた。

振ってみたり、穴を覗いたり。

しかし、やっぱり空っぽなものは空っぽ。

「…あぁ、空っぽだな」

確認終了。

「よし、ではここからが、ルリシヤ・マジックだ」

そう言って、ルリシヤはルルシーから返してもらった豚の貯金箱を、テーブルの上に置き。

パチン、と指を鳴らした。

「さぁ、これで完成だ」

「…何が?」

さっきの、ぬいぐるみのマジックが凄かっただけに。

貯金箱をテーブルに置いただけで、これが何のマジックなのかと、首を傾げる一同。

「なんも凄くねーじゃん」

と、つまらなさそうなアリューシャ。

「言ったな?アリューシャ先輩。その言葉、後悔することになるぞ」

「後悔も何も、たかだか空っぽの貯金箱に、驚くも糞もねーべさ」

「そうか。ならつまらないな。アリューシャ先輩、その貯金箱、俺に返してくれ」

「ふぇ?別にいーけど…」

アリューシャは、ルリシヤに返そうと、テーブルの上の豚の貯金箱を手に取っ…、

…た、はずだった。
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