The previous night of the world revolution~T.D.~
ここで、ルリシヤ・マジック発動。

「!?何だ!?こいつ、動かねぇ!」

空っぽで軽いはずの貯金箱は、まるでテーブルに貼り付けられたかのように、びくとも動かない。

アリューシャが引っ張っても押しても、さっぱり動かない。

動かざること山の如し。

豚の癖に。

「何で!?何で!?何で動かないのこいつ!?」

「ふふふ…。これぞルリシヤ・マジック」

ルリシヤのドヤ顔が炸裂する。

「磁石か何かですかね?」

そう言って、首を傾げるルーチェス。

「おっと、ルーチェス後輩。マジックの種明かしを希望するとは無粋だな」

「あ、済みません」

「しかし、磁石ではないぞ。テーブルの下を確認してくれても良い」

ルリシヤがそう言うと、ルーチェスはテーブルの下を確認。

俺も覗いてみたけれど。

磁石らしきものは、何処にも見当たらない。

「成程、磁石ではないようですね」

「だろう?」

「分かった!アリューシャ分かったぞ」

なおも、豚の貯金箱を引き剥がそうと奮闘しながら。

アリューシャが叫んだ。

「何が?」

「瞬着だな!瞬着つけたんだろ、豚さんの足に!すげー強力な瞬着!」

成程、まぁ普通に考えたら、それを疑うよな。

しかし、そんな安直なマジックは、ルリシヤ・マジックとは呼ばない。

「ふふふ、残念だなアリューシャ先輩。それは不正解だ。何故なら…」

「ふぇ!?」

ルリシヤが、パチンと指を鳴らした瞬間。

さっきまで悪戦苦闘していたのは何だったのか、あっさりと豚の貯金箱はテーブルから離れた。

「うぉっとっとっと!」

「おっと、危ない」

よっぽど力を込めて引き剥がそうとしていたらしく。

いきなりテーブルから離れた貯金箱の反動で、バランスを崩して倒れかけたアリューシャを、咄嗟にアイズが支えた。

「!?…!?」

アリューシャ、びっくり。

豚さんの足には、瞬着をつけた跡は一切ついていない。

どころか。

「開けてみると良い、アリューシャ先輩」

「ふぇ!?でも、何も入ってないって…」

「本当にそうかな?」

「ん?アリューシャ、中覗いてご覧、何かあるよ」

「ほぇ!?」

ルリシヤとアイズに促され、豚の貯金箱を覗くと…。

「飴!飴めっちゃ入ってる!何で!?」

さっき空っぽだったはずの、貯金箱の中に。

ぎっしりと、色取り取りの飴玉が詰まっていた。

「凄い…!ルルシー、さっき本当に、中は空っぽだったのよね?」

興奮してルルシーに尋ねるシュノさん。

「あ、あぁ…。確かに空だったはずだ…いつの間に…」

本当、いつの間に仕込んだんでしょうね?

しかも、何でテーブルにくっついて離れなかったのか。

謎は深まるばかりである。
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