The previous night of the world revolution~T.D.~
「もー、ルルシーったら…分かってないんだから…」

「…何を言いたいのか知らないが、俺は恐らく、お前の期待していることは何も言わないぞ」

「…いけじゅ…」

「いけじゅで結構だ」

全くもう。本当にいけじゅだ。

でもそんなところも…。

「…じゃあ、このロマンチックな夜空の下で佇む俺に、何のお話をしに来たんですか?」

「ロマンチックってお前…。別に大した話じゃないけどさ」

と言いながら、ルルシーは俺の隣まで歩いてきた。

恋人同士の夜のランデブー…。

…にゅふ。

告白ではないにせよ、良いシチュエーションであることは確かだ。

「…おい、フェロモン出すのやめろ」

「あぁ、済みません。良いシチュエーションだと思うと、つい条件反射で」

「条件反射でフェロモンを出すな」

分かった、分かりましたって。

じゃあ、ちょっとフェロモンレベルを下げるかな。

「それで、大したお話ではないとのことでしたが?」

「…愚痴だな。どっちかというと」

ほう?

「ルルシーが愚痴とは珍しい」

「俺だって、たまには愚痴の一つくらい言いたくなるよ。何せ、相棒がこんな奴だからな」

あれー?ルルシーが何か言ってる気がする。

気のせいだな。

きっと俺への褒め言葉に違いない。

「…今回の事件だけどな」

「えぇ…。大事件でしたね。まさかルリシヤの首がもげるとは…」

「違う。そっちじゃない」

あ、そうでしたか?

「分かってて言ってるだろお前…。真面目な話なんだぞ、ふざけるな」

「分かりました、分かりましたって」

だから、そんなこめかみに血管浮き立たせて怒らないでって。

分かりましたよ。俺も真面目になりますよ。

俺はいつも真面目ですけどね。

「『帝国の光』のことだよ」

「はい」

でしょうね。

「終わったことを、グズグズ言うのはしつこいかもしれないけどな…。俺は、まだ納得してないからな」

「え?俺がスパイ潜入してたこと?」

「そうだ」

「…わーお…」

ルルシー、あなた。

「そんなに執念深かったですか?」

それ決めたの、もう半年前ですよ。

しかも、もうその任務終わったし。

大学には、とっくに退学届を出している。

どうせ残っていたとしても、留年確定だったし。

ルティス帝国イチの教師になるの、悪くなかったんだけどなぁ。

それはまた次の機会ってことで。

…あるのか?次の機会。

人生は長いから、もしかしたらまたあるかもしれない…と、思ったが。

「あぁ、俺は執念深いからな。一生、延々と言ってやる」

「…俺今、次の機会があったら、今度こそルティス帝国イチの、カリスマ教師を目指そうかと思ってたんですが」

「ふざけるな。そんな機会は永遠に来ない」

あぁ。俺のカリスマ教師への夢が。

「第一、お前が教師になんかなったら、ルティス帝国の未来が破滅する」

酷いと思いません?この言い草。

そんなの、なってみなきゃ分からないじゃないですか。

「ルーチェス一人でも、もう手に負えない感じになってきてるのに、これ以上お前の教え子を増やされてたまるか」

「良い子に育ってるじゃないですか」

ルレイア・フェロモンならぬ、

ルーチェス・フェロモンを発するようになったんですよ?

素晴らしい成長じゃないですか。

「それに、納得してないって言っても、もう過ぎたことでしょう?」

「俺の中では過ぎてない。お前一人を危険な任務に送り出して、俺は安全な場所で伝書鳩してただけなんだぞ?思い出しただけでも腹が立つ」

「あー…。そういう話ですか…」

「…」

ルルシーは、イラッとしたようにこちらを睨んだ。

いやん。
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