The previous night of the world revolution~T.D.~
「どうも、お久し振りです」

「フューニャちゃん久し振り〜!」

『帝国の光』事件が終わり、ルーチェスさんが奥さんを連れて、自宅に帰ってきたその翌日。

アンブローシア夫妻が、我が家を訪ねてきてくれた。

「…!」

このときの、フューニャの嬉しそうな顔。

めちゃくちゃ可愛かった。

もう、なんか…。

…めちゃくちゃ可愛かった。

「セカイさんじゃありませんか。お帰りなさい」

「ただいまフューニャちゃん〜!」

ぎゅー、とフューニャに抱きつく、お隣のセカイさん。

何だろう。若干の嫉妬心が疼く。

すると、その光景を見たルーチェスさんが、俺の方を向いて真顔で言った。

「…大丈夫です。僕も嫉妬してますから」

「そ、そうですか…」

「何なら僕達も対抗して、抱き合います?」

「あ、いえ、遠慮しておきます…」

なんて恐ろしいことを。

これが他の人ならまだしも。

ルーチェスさんは、「あの」ルレイアさんの弟子。

おまけに、夫婦揃って…その…男同士のあれこれも「アリ」だと認めている。

性指向は人それぞれだが、俺はそういう趣味はないので。はい。

済みません。

「心配してたんですよ。ご夫婦揃って、しばらく姿を見なかったものですから」

「えへへ、ちょっと色々あってね〜」

俺は、アンブローシア夫妻に何があったのか知っていたが。

一般人であるフューニャに、機密を漏らす訳にはいかず。

申し訳ないながらも、フューニャには黙っていたのだ。

「それにしても、箱庭帝国に行っていたんですね、セカイさん。どうでした?初めての箱庭帝国は。ルティス帝国と違うところがたくさんあって、驚いたでしょう?」

「!?」

これには、俺だけでなく。

セカイさんの方も、びっくりしていた。

「えっ。しっ…知ってたの?」

「いえ、知りませんでしたよ?でも、今セカイさんの匂いを嗅いだら、故郷の匂いがしたので。あぁ、箱庭帝国に亡命してたんだな、と思いまして」

マジか。

さすがフューニャ。の、鼻。

どんな匂いも逃さない。

「ふんふん…。ルアリスさんの匂いもしますね。『青薔薇委員会』に匿われてたんですか?ふんふん…。あら、もしかしてあなた、ミルミルに会いませんでした?」

「え、えぇぇ!?そんなことまで分かるの!?」

「友人の匂いですから、ちゃんと覚えてます」

「すごーい!当たってる!会ったよミルミルちゃん!一緒にお喋りした!」

すげぇ。

うちの嫁、改めてすげぇ。

「す、凄くないですか?うちの嫁。凄くないですか?」

「噂には聞いていましたが、さすがの嗅覚ですね」

「うちの嫁凄くないですか!?」

「…どちらかと言うと僕は、今のあなたの気迫の方が凄いと思いますね」

と、いうルーチェスさんのマジレスも、全然聞こえていなかった。

さすが過ぎて、フューニャの嗅覚に感服である。
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