The previous night of the world revolution~T.D.~
…さて、折角来てもらったので、部屋に上がってもらい。

フューニャがお茶を淹れて出すと。

「フューニャちゃんこれ、お土産。お土産買ってきたんだよー」

セカイさんが、両手に持っていた紙袋を差し出した。

多い。

「あら、ありがとうございます」

フューニャにとっては、祖国のお土産。

それは嬉しいだろう。

「色んなところ観光に連れてってもらったから、お土産いっぱいになっちゃった」

「珍しいものが、たくさん見れたでしょう?」

「うん、凄かった!」

祖国のことを褒められて、ご満悦の表情のフューニャである。

可愛いぞ。

「…そうだ、観光中にね、こんなの見つけたんだー」

そう言って。

セカイさんは、紙袋の中から。

謎の赤い藁(?)のようなもので作られた、歪な形の人形を取り出した。

丁度首に当たる部分に、何かの動物の骨らしきものが突き刺さっていた。

な、何だあのグロい人形。

「前、フューニャちゃんがこっそり見せてくれた人形達に似てるなぁって思って、買ってきたんだけど」

フューニャ、そんなもの持ってるの?

…ま、まぁ…祖国の人形だからな。持っていても、おかしくはないか…。

子供が見たら、泣きそうな代物ではあるけど…。

すると、その人形を見たルーチェスさんがこう言った。

「あ、僕それ見たことあります。確か、箱庭帝国では、縁結びの人形として、昔から贈り物にされてるんですよね」

「あら、よくご存知ですね」

縁結び!?

あれが!?

内心びっくりしながら、しかし会話に入りきれなかった俺である。

しかも。

「へぇ〜、これ縁結びのお人形なんだ」

セカイさんの方も、特に驚いてる様子はないし。

縁結びに、何故骨が必要なのか。

「でも、それ…実は、逆の意味もあるんですよ」

え?

「逆の意味?」

「ちょっと、貸してもらえますか、その人形」

「うん?良いよ」

セカイさんに、人形を手渡されたフューニャは。

おもむろに、首に刺された骨を引っこ抜いた。

えっ。

そして、引っこ抜いた骨を、今度は腹部に突き刺し。

更に人形を逆さにし、藁を一本抜いて、その藁を糸代わりに、人形の足首に括り付け。

人形は、逆さ宙釣り状態になった。

「はい、出来ました」

何が?

「…それ、どうなったの?」

「縁結びの反対です。要するに『虫除け』ですね。これを夫婦の寝室に吊り下げておくと、余計な虫がつかなくて済みますよ」

「成程!ルーチェス君に、悪い女の子や男の子が寄ってこなくなるんだね?」

「そういうことです。これはとてもよく効くので、私はもっぱら、こちらの用途で使っています」

使ってるの!?

と、ということは、我が家の寝室にも、何処かにあれが吊り下げられているのだろうか。

み、見覚えがないんだが…。

「しかも私のは、土産用の既製品でなく、手作りですから。効果は既製品のそれを遥かに上回ります」

マジで?

「良かったら、それもカスタマイズしますよ」

「本当!?ありがとーフューニャちゃん!」

…。

女性陣のやり取りを見た、ルーチェスさんが俺に一言。

「…凄くないですか?お宅の嫁」

「…本当…凄いですね…」

もう、凄いを通り越して、恐怖を感じてきたのは気のせいだろうか。
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