The previous night of the world revolution~T.D.~
「あぁー!笑った!笑わないって約束だったのに!酷い!ルーチェス君の馬鹿ぁ!」

「いや、済みません。心の中で抑えておくつもりだったんですけど、つい本音が顔に」

「ばかばかばか!私だって一大決心だったんだからね!」

セカイさんは、半泣きでポカポカ殴ってきたが。

ひよこにつつかれてるくらいのダメージしか入ってなくて、それがまた笑いを誘う。

「いや、でもですね、セカイさん」

「お姉様とお呼び!」

「セカイお姉様」

「何よ!」

半泣きのところ、申し訳ないですが。

「それはさすがに無理がありますよ。僕は物心つくかつかないかの頃から、ずっと訓練してきて、今これだけ強くなったんですよ?余程の天才でもない限り、一念発起して訓練始めて強くなれるんじゃ、世の中誰も苦労してません」

「それは…そうだけど…」

『青薔薇連合会』の幹部の皆さんも、大体そうでしょう。

ルレイア師匠も、貴族の生まれで、幼い頃から訓練を重ねてきたから。

今、あの死神ルレイア師匠に昇華したのであって。

少なくとも、人生初の飛び蹴りを派手に失敗し。

壁に向かって突進して、鼻血を出しているようでは。

とてもじゃないが、僕と同じくらい強くなるなんて、無理な話。

大体、僕もここまで来るのに、それなりに苦労したので。

一朝一夕でセカイさんに強くなられると、僕の面目的なものが、丸潰れ。

「でも、千里の道も一歩からって言うでしょ?」

「良いことわざだと思いますが、セカイさんの場合、特に才能が見られる訳でもなさそうなので。千里どころか、億里くらいはありますね。そんなあなたに、世の中には『諦める』という選択肢が存在することを教えてあげましょう」

「うぇぇぇぇん!ルーチェス君が私の心を折ってくる〜!」

済みません。折りました。

でも、僕も心を鬼にして言ってるんですよ?

「別に僕は、あなたにそんなことを求めてませんよ」

ルレイア師匠みたいに、強い人が好みなら、そういう相手を選んでますよ。

「僕はセカイお姉様が弱かろうが、半身不随だろうが、精神病患者だろうが、変わらずに好きですよ?」

「う…。そう言ってくれるのは…嬉しいけど…」

「どうやら、『帝国の光』のときに、足を引っ張った(笑)ことを気にしてるようですが」

「笑い事じゃないよー…」

僕にとっては笑い事ですよ。

「僕は全然、足を引っ張られたとは思ってませんし、何であなたがそんな風に思うのか、逆に不思議ですね」

「…」

「むしろあなたをちゃんと守りきれず、申し訳なく思ってるくらいなんですが。強いこととエロいことくらいしか取り柄がないのに、お姉様を危険な目に遭わせて申し訳ないです」

「…エロいことって、取り柄なの?」

え、取り柄じゃないの?

「私だって…私だってさ、守ってもらうだけじゃなくて、ルーチェス君の力になりたいよ」

「あなたが後ろにいると思うと、僕は自然に強くなってるんですけどねぇ」

守る者があるからこその強さ、と言いますか。

ゴールキーパーだって、そうでしょう?

自分がゴールを死守しなければ、味方が負けてしまう。

そう思うからこそ、何としてもゴールを守ろう、と意気込むのであって。

別にゴールなんて守らなくても、試合に何の影響もないですよ、なんて言われたら。

ゴールキーパーだって、わざわざゴールの前には立たない。

当たり前でしょうよ。ボール飛んできたら怖いじゃん。

それでもキーパー達がゴールの前に立つのは、後ろに守るべきものがあるから。

僕もそれと同じなんだけど、その気持ちをどう伝えたら良いものか。
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