The previous night of the world revolution~T.D.~
「だって、だってさ、お隣のフューニャちゃんとかは」

僕が悩んでいると、セカイさん、改め。

セカイお姉様が、続けざまにこう言った。

「旦那さんに魔除け?厄除け?のお守りとか作って、渡してあげてるんだって。そのお陰で、フューニャちゃんの旦那さんは、無病息災だって」

「…」

…そういえば。

以前、ルヴィアさんを見かけたとき。

首から、般若みたいなお面をつけた、赤い糸を織り込んだ藁人形(逆さま首吊り状態)をさげてて。

曲がり角で鉢合わせた女性構成員に、悲鳴をあげられていたな。

あれはビビりますよ。

聞くところによると、あの日ルヴィアさんは、嫁から「今日は悪い気を感じますから、これをつけていてください」と渡されて、つけていたらしいが。

「私も、フューニャちゃんみたいに、ルーチェス君を守ってあげたい…」

僕は、あんな守られ方は御免だと思いました。

…そもそも。

「…あなたの、その気持ちは嬉しいんですが…」

そうじゃない。

僕が求めているのは、そうじゃないのだ。

「…ほら、僕、元は王子だったじゃないですか」

「…?うん…」

「だから、今まで僕、散々、それはもう、過保護なまでに、守られてきたんですよね」

もう、いっそ鬱陶しいからやめてくれ、と思うほどに。

「だから、もう守られたくないです。むしろ、他の誰かを守る為に自分の力を使いたいんですね」

「…」

「僕、好きな女の子相手には、守られるより、守りたい派なんで…」

だから、あなたがこう…僕の性癖がズレるようなことになると。

それは、大変不本意。

「…そのままでいてくれませんかね?」

別に、強くならなくても良いし、何なら弱くなっても構わないから。

「僕の大事な、守るべきものでいてくれませんかね?」

大切な、宝物のように。

自分の生きる理由のように。

もし窮地に陥ることがあっても。

守らなきゃならないんだから、帰らなきゃならないんだから、絶対生き延びてやる、って思える理由に。

…なってくれませんかね。僕の自分勝手ですけども。

「ルーチェス君…」

「…駄目ですか?」

「…ううん、駄目じゃないよ」

それは良かった。

「何だか、ルーチェス君らしいなぁって思った」

「そうですか」

「ルーチェス君って、さては、お姉ちゃんにべた惚れだろう?」

「今知ったんですか?元々べた惚れですけど」

「…ふふふー」

セカイお姉様は、にや〜、と。

人の悪そ、いや、可愛らしい笑みを浮かべた。
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