The previous night of the world revolution~T.D.~
…一番、理想的なのは。

「は?何その胡散臭いサークル」とか。

「え?何を考えるって?」とか。

「そんなサークルあったんだ。初めて知った」とか。

そんな反応をして欲しい。

まだこの国の、この大学の、ここにいる若者達の大半は。

一部の人間を除き、そんなサークル名を冠する共産主義集団がいるのだということさえ、知らない。

そうであって欲しい。

しかし。

俺の期待を裏切るように、

「あー、知ってる知ってる。聞いたことあるよ、それ」

Aは、この反応。

Bはと言うと、

「説明会で見たよ、そのサークル。凄い人だかりだったよな。気になったんだけど、目的は水泳部だったから、スルーしちゃった」

つまり、水泳部というアテがなかったら、『考える会』のブースに来ていても、おかしくなかったと。

更に、Cに至っては。

「へぇ、二人共、あのサークル入ったんだ。どんな感じ?俺もあそこ、入ろうかなってちょっと思ってるんだけど」

危うく、新入部員勧誘になるところだった。

…マジかよ。

入学したばかりだというのに、三人共、あの怪しげなサークルの名前を知っている。

Cに至っては、『ルティス帝国を考える会』に入ろうかどうしようかと、考えてすらいる。

それに。

「俺も気になる。どうなの?あそこ、確か兼部OKだったよな?」
 
Aが、食い気味に聞いてきた。

「…えぇ」

パンフレットに、書いてあったね。

他サークルとの兼部可、と。

「やっぱり。丁度良いや。もし良さそうなサークルだったら、俺も紹介してくれよ」

兼部を考えるほどに、興味があると。

そして、Bも。

「確かに。悪くないかもな。どんな感じか、また教えてくれよ」

二人共、それぞれ既にサークルに入っている(もしくは決まっている)にも関わらず。

『ルティス帝国を考える会』への入会を考えている。

知っているどころか、興味津々という訳か。

…これは。

思った以上に、この国は面倒なことになりつつあるのかもしれないな。

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