The previous night of the world revolution~T.D.~
「あ、会長!」

「お疲れ様です」

「こんにちは、会長」 

わらわらと、エリミア会長に群がるサークルメンバー達。

成程ねぇ。

随分と、慕われているようだ。

その姿は、まるで信者達に群がられていた、ルチカおばさんを彷彿とさせた。

つまり、ここも同じなのだ。

この光景を見ただけで分かる。

あのエリミア会長は、根っからの共産主義者。

そんな彼女を、サークルメンバーがこぞって慕うということは。

この『ルティス帝国を考える会』そのものが、共産主義的思想の持ち主が集まっている、と考えて良い。

「じゃあ、皆。今日からは一年生も入ってきたことだし」

エリミア会長は、ぱんと手を叩いて言った。

「今日は改めて、このルティス帝国をより良くする為にどうしたら良いか、皆で話し合いましょう」

ほう。

「さぁ、一年生さん達も、遠慮しないで皆席に着いて。あ、飲み物欲しかったら、各自そこの冷蔵庫やポットのお湯を使って良いから」

エリミア会長は、講義室の隅にある、給湯ポットと、冷蔵庫、そして業務用の大量に入った紙コップの袋を指差した。

飲み物はセルフサービスってね。

しかし、初めての場で、おまけに年上ばかりのサークルメンバーに囲まれ、緊張気味の一年生は、誰も動かない。

別にお茶くらい、勝手に取っても良いと思うんだけどな。

俺だけでも飲み物取りに行きたかったが、何度も言うように、俺だけ周りと違う行動を取って、目立つ訳にもいかないし…。

まぁ良いか、と思ってたら。

「何々?緊張してる?飲み物くらい好きにもらって良いんだよ。君ら、何が良い?」

上級生の男性メンバーが立ち上がって、一年生の為に、紙コップを取り出し始めた。

「え、あ、いや…そんな、自分達でやりますから」

エリアスが、慌てて立ち上がりかけたが。

「良いって、良いって。皆お茶で良い?」

と、冷蔵庫から緑茶のペットボトルを取り出し、紙コップに注ぎ。

「はいどうぞー」

「あ、ありがとうございます」

俺達、一年坊主達の前に置いて回った。

…俺紅茶が良かったんだけどな。

まぁ良いか。どうせ、紅茶って言ってもティーバッグだし。

ともあれ。

「ありがとうございます…」

「気にするなって。先輩後輩とか、ここではそういう堅苦しいのはナシだから」

「そうそう。この会では、会員は皆公平。年齢も性別も学部も、今は関係ないよ」

この行為によって、さりげなく上級生が自分の株を上げたことは確かだな。

何も知らない一年生達にとって、「親切で優しそうな先輩」に映ることだろう。

点数稼ぎご苦労様。

更に。

「そう、彼の言った通り」

追撃でも入れるかのように、エリミア会長が言い出した。
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