The previous night of the world revolution~T.D.~
まず最初に口を開いたのは、一年生ではなく、別の上級生。

当然、彼らにも等しく発言権はある。

皆平等、とか言ってたもんな。

「私はやっぱり、貧富の差をなくすのが一番大事だと思う」

と、ありきたりな意見。

小学生でも言えるよ、そんなこと。

しかし、シンプルだからこそ、何よりも難しいことでもある。

それが出来たら苦労しねーよ的な。

「そうだな。今のルティス帝国は、貧富の差が大き過ぎる」

「私達は帝都にいて、それなりに暮らしを保証されてるけど…。その日の生活にも苦しんでる人もいるものね」

「満足に教育も受けられない人もいるんだからな。そういう、貧しさに苦しんでる人は助けなきゃいけないと思う」

次々と、賛同する意見が続出。

「うん。私も同意見だな。帝都のレストランでは、客が食べ残した食べ物を捨ててる始末だもんね。もしあの食べ物が、貧民街の人達に配られていたら…」

「…きっと、飢えに苦しむ人が少しでも減るはずなのにな。帝都の多くの人達は、そんなことにも気づいてない」

「同じ国なのに、食べ過ぎで病気になる人もいれば、食べられなくて病気になる人もいるなんて、おかしいよ」

「そうだよな。俺達は皆、同じルティス帝国の民なんだから。皆平等でないとおかしいよな」

…。

…ふーん。

中学生か何かの討論ですか?ってくらい、つまらないね。

誰でも思いつくようなことを、大学生になってまで言うんじゃねぇよ。

「一年生諸君、君達はどう思う?」

エリミア会長が、俺達一年生に尋ねた。

…来た。

一番に声を上げたのは、俺の隣に座っているエリアスだった。

「…俺も、同感です。同じルティス帝国に生まれたのに、どうしてこんなに違いがあるのか…。俺、ずっと違和感を覚えてたんです」

エリアスがそう言うと。

サークルメンバー達は、その気持ちはよく分かるとばかりに、深く頷いた。

良かったね。『考える会』に受け入れられた証だ。

更に。

「わ、私もそう思います…。私の父の友人が、貧民街でボランティアをしていて…その父の友人から、色んな悲惨な話を聞かされました」

「悲惨な話?」

「…痩せ衰えた人が、僅かなお金の為に空き缶を拾い集めたり…。貧民街を歩いているだけで、小さな子供達が群がって物乞いしてきたり…。本当に、聞いていられないです」

「…」

あー、俺も見たことあるよ、それ。

帝国騎士官学校時代に。

そもそも、ルルシー達がいたのも、そういうところだったんだろうし。

じゃ、そろそろ。

重い空気になってしまったところで、俺も動き出すかな。

「…見たことはありませんが、俺も人づてに聞いたことがあります。実際に貧民街で生まれて、運良く帝都に来て、教育を受けられたことで、貧民街から抜け出せたって…」

俺は、いかにも心が痛いという顔をしてそう切り出した。

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