The previous night of the world revolution~T.D.~
「『天の光教』は、宗教団体でありながら、それを傘に着て政権に口出しをし、しかも、明らかに危険なテロ行為を行っていました。あのまま放置すれば、国家転覆の危険性もあったと思います」

淡々と喋るルーシッドは、さすがと言うべきか。

曇りない瞳で、怯えなどは一切感じなかった。

まぁ、帝国騎士団四番隊隊長が、この程度の批判に晒されて、へこんでるようじゃ。

俺の後釜を任せるには値しないのだが。

「帝国騎士団の立場になって、考えてみてください。国家の治安を守る為にも、『天の光教』は放置出来なかったんじゃないでしょうか?」

「…」

ルーシッドの問いかけに、『考える会』の会員達は、呆然とルーシッドを見つめていた。

こいつ、何言ってるんだ?とでも言わんばかりの顔。

そんなことを言われるなんて、夢にも思ってなかったのだろう。

全く、これじゃあ何の為の議論なんだか。

一つの意見に対して、賛同だけして、「そうだねその通りだよ」と言ってるだけじゃ、議論の意味がない。

議論の場には、いつだって反対意見も必要だ。

そして初めて、ルーシッドがその反対意見を口にした。

これまで、そんな反対意見を述べる人間は、一人もいなかったのだろう。

彼らは驚いたように目を見開き、口をつぐみ。

そして、ようやく声を絞り出したのは、上級生の先輩。

「放置出来なかったって…。それは、放っておいたら、帝国騎士団の立場が危うくなるから、だろ?だから奴らは、保身の為に『天の光教』を…」

「そうかもしれません。でも、『天の光教』はデモと称して、実質テロ行為を行っていましたよね。怪我人も死人も出て…。そこまでされたら、治安維持の為に帝国騎士団が動くのは、仕方ないことでは?」

「それは逆じゃないですか?『天の光教』の正当なデモ行為に、帝国騎士団が無理矢理介入したから、『天の光教』に負傷者が出たんじゃ…」

正当なデモ行為だって。

笑いが出るな。

しかし、笑わずに言い返すルーシッドは、立派なものだ。

「報道されてないだけで、帝国騎士団にも被害は出ている…はずですよ。『天の光教』だって、多少なりとも武装していたんだし…」

「でも、それっておかしくないですか?そもそもデモ自体は罪じゃないのに、何で帝国騎士団が、あんなに執拗に介入したんですか」

「だから、最初は帝国騎士団も、事態を静観していたじゃないですか。でも、次第にデモ行為の規模が大きくなっていったから、仕方なく鎮圧に乗り出しただけで…。その際にも、ちゃんと声明を出してましたよ。警告もしました。それなのに、『天の光教』はデモ行為をやめずに…」

おいおい、ルーシッド。

ディスられまくって、苛立つのは分かるが。

さすがに、ちょっと言葉が過ぎるぞ。

仕方ない、ここは。

ちょっと、助け舟出してやるか。
< 91 / 820 >

この作品をシェア

pagetop