The previous night of the world revolution~T.D.~
「詳しいですね、ルーシッドさん…でしたっけ?『天の光教』事件について、調べたんですか?」

俺は、白熱しそうになる議論を中断する為。

そして、明らかに喋り過ぎなルーシッドを、冷静にさせる為に。

敢えて、口を挟ませてもらった。

大人な大人の、親切な計らいってね。

俺からの問いに、さすがのルーシッドも冷静になったようで。

「あ…えと、はい。あの事件の後、色んな文献や新聞を読んで、調べたんです。その…知り合いの一人が、『天の光教』と帝国騎士団の小競り合いに巻き込まれて、怪我をしたのがきっかけで…」

まぁ、稚拙な嘘ではあるが、及第点をあげよう。

その知り合いって、もしかして同僚?

とにかく、あまり「事情通」であることを知られるな。

あくまでお前は、民間人としてこの場にいることを忘れるなよ。

「知り合いが怪我を…。それは気の毒だったわね」

「でも、それだって帝国騎士団が武器を使ったから、そのせいじゃないのか?」

「いえ、それが…。ああいう、民間人が巻き込まれる可能性のあるときは、銃や剣などは使わず、相手を無力化する為の催涙ガスを使うか…。銃を使ったとしても、威嚇以外には使わないそうですよ」

「…本当なのか?それ…。帝国騎士団のプロパガンダじゃないのか?」

「…それは…真偽の程は分かりませんけど…」

大丈夫。

俺とお前だけは、その真偽をちゃんと分かっている。

帝国騎士団の決まり事だった。

非武装の民間人が巻き込まれる可能性がある場合、戦闘時は殺傷能力の高い武器の使用を禁じていた。

何事があっても、関係のない民間人が傷つけられるようなことがあってはならない。

帝国騎士官学校で、嫌と言うほど叩き込まれた大原則だ。

俺と同じく、あの腐れ学校を卒業したルーシッドは、歯痒いだろうな。

自分は、自分達は決して、国民を害するようなことはしてないのに、と。

そうだよね、知ってる。

お前達が害するのは、武装した敵と、そして味方だけだ。

俺も、その味方に背中を撃たれた人間だからね。

よく知ってるんだよ。

さて、皮肉はさておき。
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