The previous night of the world revolution~T.D.~
ルーシッドは、言葉を続けた。

「…ルティス帝国をより良くする為には、きっと色んな方法や考え方があるはずです。一概に、帝国騎士団が悪い、貴族や王族が悪い、とは言えないと思います」

ド正論。

「でも、ルティス帝民の間に、大きな貧富の差があるのは事実だろう?それは、一部の貴族達が富と権力を掌握してるからじゃないのか?」

「それは…。…ルティス帝国民に貧困差があるのは、確かに事実ですけど。その責任を、貴族制度や帝国騎士団達のせいだけにするのは、間違っているんじゃないでしょうか」

「…何?」

「一つの出来事に対して、一つのものや一人の人にだけ原因があるんじゃない。きっと、色んな要因が複雑に組み合わさって、その結果今の現状があるだけで…」

「…」

ルーシッドのド正論に、口をつぐむしかない会員達。

黙るってことは、その通りだと認めてるってことだぞ。

間違ってると思うなら、すぐ反論するだろうからな。

そう、ルーシッドの言う通り。

お前達は、目に見えない問題を、目に見えるもののせいにしようとしているに過ぎない。

その方が簡単だからな。

貴族も女王も帝国騎士団も、目に見えるから。

目に見えない、貧困という抽象的な問題の、原因を特定するのは難しいから。

簡単に、目に見えるもののせいにしようとしている。

頭ってものを使えよ、馬鹿共。

こんな立派な大学に来ておいて、小学生でも出来るようなことをしてるんじゃない。

目に見えないものは、目に見えないからこそ、自分の頭で考えなきゃならないんだよ。

何故、そんな簡単なことが分からないのか。

「…」

「…」

しばしの間、張り詰めたような緊張感が場を支配していたが。

あまり、良い空気ではないな。

この空気の原因を作った張本人であるルーシッドに、無言で批難の目が向けられているのは、ルーシッドも理解しているだろう。

お前らの無知を、ルーシッドのせいにするなよ。

すると。

「皆、色んな意見があるのね。一年生なのに、しっかりした意見を持ってる学生がいて、感心しちゃった」

会長のエリミアが、努めて笑顔を作りながら言った。

「そろそろ下校時刻だし、今日はこのくらいで、お開きにしましょう。今日も有意義な議論が出来て楽しかったね」

どの口で言ってんだか。

「じゃ、次の活動日は明後日。また皆で集まりましょう」

会長の、その一言で。

何となく気まずい空気のまま、今日はお開きになった。
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