The previous night of the world revolution~T.D.~
…その後。

「用事」を済ませた俺は、潜伏先に帰宅した。

するとそこには、何やらしょげた顔のルーシッド。

…陰気な奴だな。

「何ですか、その陰気な顔…。殴って欲しいんですか?」

「え?いや、そういう訳じゃ」

そうか。

ごめんな。シャキッとしろやゴラァ!って殴られたいのかと思った。

「じゃ、何ですか。童貞の自分を恥じてるんですか?それなら、俺のお古を二、三匹…」

「そ、そ、そういうことではなく!」

違うのかよ。

何だお前。童貞の自分を恥じてないのか。

そんなだから、いつまでたっても童貞なんだよ。

「ただ…その、あれで良かったのかと思って」

「あぁん…?」

「予想はしていましたけど…でも、予想以上にあのサークル…『ルティス帝国を考える会』は…共産主義の色が濃い」

濃いって言うか、もう完全に染まってたもんな。

「そんな中、俺一人が反対意見を口にして…」

「え?あなた帝国騎士団四番隊隊長ともあろう者が、周りの皆にディスられて悲しいよー、ですか?」

「い、いや…そういうことでもなく…」

そうとしか聞こえなかったんだけど?

「あそこまで真っ向から批難されると…やっぱり、こう…。俺達が国民の為に苦心していたのは何だったのか、という気持ちにもなりますよ…」

「へーぇ。それを俺に言いますか」

「え、えぇと、その」

「別に良いですけど」

逆の立場だったら、あの勢いでもし責められていたのが『青薔薇連合会』だったなら。

あの場で、全員俺の鎌の錆にしてやるところだっただろうし。

「一応、今日の会議で、俺は王侯貴族制、帝国騎士団賛成派の人間だと、皆に伝わったとは思うんですが…。どうでしょう」

「充分伝わったでしょう。上級生の会員達、皆あなたのこと、異物でも見るかのような目ぇしてましたし」

完全に、こいつ何言ってるんだ状態だったもんな。

これで、ルーシッドは『ルティス帝国を考える会』で、異端な意見を持つ者として認識された。

逆に俺は、そんなルーシッドを異端視する、多くの『考える会』会員達の同志とみなされた。

初日にしては、そこそこの結果だろう。

まぁ、初日から全面対決する必要もないしな。

まずは小手調べってところだ。

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