The previous night of the world revolution~T.D.~
「ルルシー!」

俺は、愛しい遠距離恋愛中の恋人の名前を呼んだのに。

電話の向こうのルルシーは、

『この馬鹿ルレイア』

何故か、開口一番罵倒された。

分かる分かる。遠距離恋愛が辛くて、つい気が立っちゃうんだよね。

俺も、ランドエルスに潜入したときは、あまりの寂しさから、下僕や他のメス共相手に、散々「ストレス発散」したものだ。

うふふ、ルルシーったら可愛い。

『お前な、ルーシッドを困らせるなって言っただろ。案の定か。二日三日でヘルプが来たらどうしようと思ってたら、案の定二日三日持たずに来たな!全く期待を裏切らない男だよお前は!』

「えへへ」

『褒めてんじゃねぇよ!』

ルルシーが褒めてくれた。嬉しいなーえへへ。

「あのねルルシールルシー。俺頑張ってるんですよ〜」

『何をだよ?ルームメイトにデリ…い、いかがわしいものを呼ぶんじゃない』

「そんなことよりルルシー」

『そんなことよりって何だよ?半泣きで俺に訴えてきたルーシッドの気持ちも、少しは考えてやれ』

ルーシッドのことなんてどうでも良いよ。

愛しいルルシーの声を聞いたことで、俺はルーシッドにデリを呼んでやることなんて、すっかり忘れていた。

世の中、優先順位ってものがあるんだよ。

そして俺の中で、ルルシーより優先順位が高いものは存在しない。

「今日、早速『考える会』の討論があったんですよ」

『…『考える会』?『ルティス帝国を考える会』のことか?確か…お前が潜入してるサークルの名前だったな』

「そうそう、それです」

『…一応聞いておくが、その携帯、盗聴は…』

「されてないですよ。そんな初歩的なミスは犯しません」

スパイとして潜入中なのだ。

通信機器についても、普段よりずっと気を配っている。

『そうか。なら良かった』

「えぇ。ちゃんとここからでも、ルルシーの寝室の様子が見れるよう、ルリシヤに手配してもらってますから。心配しないでください」

『心配しかねぇよ。何をやってんだ馬鹿共めが』

え?何か言った?

『…はぁ…』

ルルシーの、ふか〜い溜め息。

やっぱり遠距離恋愛って辛いね。ルルシーにこんな溜め息をつかせてしまうなんて…。

『…それで?』

「はい?」

ルルシーの方から、話題を変えてきた。

『スパイの方は、上手く行ってるのか?今日から授業始まったんだろ?』

「あぁ、はい。くっそつまんない授業でしたよ。あれだったら、俺が授業やった方が、余程将来有望な学校の先生を育てられますね」

『…』

あれ?ルルシーが無言?

電話の調子悪い?

『…それは良いとして』

良いの?

『サークルはどうだった?やっぱり、帝国騎士団の予想通り…』

「はい。反王制、反貴族制度、反帝国騎士団の三拍子が、綺麗に揃ってましたよ」

『…そうか…。全員が、サークル全体がそんな意見なのか?他の意見の者はいないのか?』

「俺の目から見れば、サークル全体が共産主義集団でしたね」

この場合、反王制、反貴族制度、反帝国騎士団の三拍子は、イコール共産主義になる。

少なくとも、現状のルティス帝国では、そうだ。
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