The previous night of the world revolution~T.D.~
「あぁ、極楽極楽…」

「お客さん、こっちはどうですか〜?」

「あ〜良い感じ…」

その、肩甲骨の辺りな。

超気持ち良い。

「マッサージ上手いですね、セカイさん」

「ふふふ、だろう?前職はこんなことばっかりしてたからね〜」

あー、成程。

「疲れたおじさん達のマッサージなんて、お手の物だよ」

「疲れたおじさんです。ありがとうございます」

「ルーチェス君は、疲れたおじさんじゃないよ」

「一緒じゃないんですか?」

「全然違うよ。ああいうおじさんはねー、まぁ清潔にしてる人もいたけど。汗まみれフケまみれで店に来て、汗ばんでベタベタした身体に、素手でマッサージせがんでくるんだから」

うわぁ…。

想像しただけで、グロ画像。

「しかも、あの汗臭い匂い!もう二度と嗅ぎたくないよ〜…」

「…僕は良いんですか?」

「ルーチェス君は、いつでもルーチェス君の匂いだから、平気」

事案。

僕の匂いは、果たして良い匂いに分類されるのか否か。

「フューニャちゃんが、旦那さんの匂いが一番好きだっていう気持ち、なんか分かるな〜」

「…」

悲報。

僕の嫁が、お隣の嫁に感化されつつある。

別に良いけど…。

「それに、ルーチェス君」

「はい?」

「今日入学式だったんでしょ?疲れてるだろうなと思って」

そう。

ルレイア師匠達が通うルティス帝国総合大学は、二日前が入学式だったが。

僕が通うことになる、私立ローゼリア学園大学の入学式は、今日だった。

「そんなに大変じゃありませんでしたよ」

「そう?でも…見に行きたかったなぁ、ルーチェス君の晴れ姿」

晴れ姿って。

無難に、ただのスーツで行ったよ。

わざわざ、量販店のスーツを買ってきた。

自前のオーダメイドスーツじゃ、悪目立ちするかなと思って。

「それにしても、大学かぁ…。私、高校もまともに行ってないからよく分かんないけど、大学ってどんなところなの?」

どんなところ、と来たか。

そうだなぁ…。

簡単に説明するならば、

「小中高校は、色んな科目の一般常識的なことを、広く浅く勉強するところで」

「うんうん」

「大学は、自分が絞った分野について、専門的に狭く深く勉強する場所です」

「ふむ…?例えば、どんな分野?お料理とか?」

家政科かな。

「あ、分かった。キャバクラで働いてたとき、後輩の子が言ってた。美容師さんとかになる勉強するところが、大学なんでしょ?」

美容師なら、大学でなくても専門学校で事足りるのでは?

「他に何があるの?パティシエとか?」

「まぁ…そんなものもありますが、大抵の大学にあるのは、経済学部や福祉学部や、ルレイア師匠が通ってる教育学部とか」

「教育学部?」

「学校の先生になる為の勉強をするんですよ」

「へぇ〜…。大学に入るまでも、たくさん勉強してきたのに、学校の先生になるにも勉強して、今度は子供達に勉強を教えるなんて。一生勉強と付き合わなきゃならないなんて、大変ね」

良いことを言いますね、セカイさん。

確かに。

考えてみれば、学校の先生って、ストレートで教員資格をゲットして、教師として赴任したら。

学校以外の社会を知らずに、一生を終えることになりかねないんだよな。

途中で教師やめない限り。

そう思うと、ちょっと考えさせられるよな。
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