従者は永遠(とわ)の誓いを立てる
「そう、ですね。もうおりません」
フレンは笑みを浮かべた。多分、ちょっと困ったような笑みだっただろうけれど。
「いないの? 私のお母様のように、亡くなってしまった、のかしら」
自分のことと照らし合わせて訊いたのだけど、フレンは首を振った。
「いえ、そういうわけではないと思います」
「生きてらっしゃるのに、いないの……?」
グレイスは不思議に思った。貴族の令嬢として生まれ、育てられたグレイスにはそのとき理解ができなかったのだ。そのあとフレンが言ったことが。
「別れてしまったのですよ。もう、会えないのです」
フレンはそう言った。ちょっと寂しそうな表情を浮かべて。
グレイスがその意味を理解するのは、更に数年後であった。
フレンはある意味、捨てられた子供、といっても良い存在であったのだ。
流石に理由までは突っ込んで訊けなかったし、もしかしたらフレン本人も知らないことだったのかもしれない。
ただ、親に育てることを放棄された。それは確かなこと。
そこからなにかの縁で、父の元へやってきて、やはりこの確かな理由はわからないが、父はフレンを雇うことにした。使用人として、グレイスの従者として。
その選択は間違っていなかった。フレンは優秀な使用人で従者に成長したのだから。
父もフレンを一人の使用人として重宝するようになっていたし、グレイスの世話も多方面に渡って任せていたほどだ。それでグレイスにとって『半ば育ててくれた』存在になったわけだが……。
それはともかく、フレンに両親がいないと言われたグレイスは、あまり良くないことを訊いてしまったと、幼心に思ったものだ。
「ごめんなさい、それは寂しいわね」
素直に謝って、寄り添うようなことを言ったグレイス。フレンはそんなグレイスににこっと笑ってくれた。
「いいえ。もう過去のことですから。それに今、私には別の家族がおります。寂しくなどございません」
グレイスにすぐにはわからなかった。
両親がいないのに家族、とは。
そんなグレイスに、フレンは嬉しそうな顔をして言ってくれたものだ。
「お嬢様が、そしてこのお屋敷の皆様が私の家族です。お父様やお母様とは違いますが、一緒に暮らしている大切なひとたちなのです」
グレイスもそれを聞いて嬉しくなった。
「私、フレンの家族なのね!」
フレンも嬉しそうに言ったグレイスに、ほっとしたのだろう。優し気な翠色の瞳でグレイスを見つめて言ってくれた。
「はい。私にとって、一番大切なひとですよ」
フレンは笑みを浮かべた。多分、ちょっと困ったような笑みだっただろうけれど。
「いないの? 私のお母様のように、亡くなってしまった、のかしら」
自分のことと照らし合わせて訊いたのだけど、フレンは首を振った。
「いえ、そういうわけではないと思います」
「生きてらっしゃるのに、いないの……?」
グレイスは不思議に思った。貴族の令嬢として生まれ、育てられたグレイスにはそのとき理解ができなかったのだ。そのあとフレンが言ったことが。
「別れてしまったのですよ。もう、会えないのです」
フレンはそう言った。ちょっと寂しそうな表情を浮かべて。
グレイスがその意味を理解するのは、更に数年後であった。
フレンはある意味、捨てられた子供、といっても良い存在であったのだ。
流石に理由までは突っ込んで訊けなかったし、もしかしたらフレン本人も知らないことだったのかもしれない。
ただ、親に育てることを放棄された。それは確かなこと。
そこからなにかの縁で、父の元へやってきて、やはりこの確かな理由はわからないが、父はフレンを雇うことにした。使用人として、グレイスの従者として。
その選択は間違っていなかった。フレンは優秀な使用人で従者に成長したのだから。
父もフレンを一人の使用人として重宝するようになっていたし、グレイスの世話も多方面に渡って任せていたほどだ。それでグレイスにとって『半ば育ててくれた』存在になったわけだが……。
それはともかく、フレンに両親がいないと言われたグレイスは、あまり良くないことを訊いてしまったと、幼心に思ったものだ。
「ごめんなさい、それは寂しいわね」
素直に謝って、寄り添うようなことを言ったグレイス。フレンはそんなグレイスににこっと笑ってくれた。
「いいえ。もう過去のことですから。それに今、私には別の家族がおります。寂しくなどございません」
グレイスにすぐにはわからなかった。
両親がいないのに家族、とは。
そんなグレイスに、フレンは嬉しそうな顔をして言ってくれたものだ。
「お嬢様が、そしてこのお屋敷の皆様が私の家族です。お父様やお母様とは違いますが、一緒に暮らしている大切なひとたちなのです」
グレイスもそれを聞いて嬉しくなった。
「私、フレンの家族なのね!」
フレンも嬉しそうに言ったグレイスに、ほっとしたのだろう。優し気な翠色の瞳でグレイスを見つめて言ってくれた。
「はい。私にとって、一番大切なひとですよ」