従者は永遠(とわ)の誓いを立てる
 こういう食事。手づかみは初めて体験したけれど、そしてお行儀の良くないことだと思ったけれど、楽しいものだった。こんなに気軽に食べられる食事もあるのだ。
 普段の食事はナイフとフォークを使ってしずしずと食べなければいけないので、もう慣れ切っているとはいえ、かしこまったものである。ここではそんなこと、気にしなくていいのだ。
 普段からこうしたいとは思わないけれど、たまにはこういうところでも食べてみたい。そうグレイスに思わせてくるような食事のひとときであった。
 さて、そろそろ行きましょう。
 食休みに残っていたアイスティーを飲んでいたけれど、それもなくなった。あまり時間もないのでグレイスはそろそろ店をおいとますることにする。
 お金はカウンターで払っていたので、もう特に払わなくていいだろう。
 ただ、この店は食器も自分で片付けるようだ。食べ終わったひとたちはトレイに空いたお皿や紙などを乗せて、どこかへ向かっている模様。
 グレイスは食べるうちや、食休みをしているうちに、それをちゃんと観察していた。
 それに倣って、トレイに使ったものを全て乗せて、持ち上げた。折よく同じように食器を下げようとしているひとを見つけたので、ついていく。カウンターの横にある、台。そのひとはトレイをそこに置き、紙類は横にあるごみ箱らしいものに放り込んだ。
 なるほど、ああするのね。そのひとが行ってしまってからグレイスは同じように片付けた。
 自分の食べたものを片付ける。生きてきて、ほんの数回しかしたことがない。
 確かにちょっと面倒ではあると思った。けれど、今回は楽しさのほうが強かった。
 これも街での楽しみのひとつ。片付けも終えて、グレイスは出口へ向かった。
 お腹と好奇心。両方が満たされて、すっかり満足しながら。
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