劇薬博士の溺愛処方
 ちゅっ、と額に口づけられて、三葉は頬を真っ赤にする。恋人になってもう、十ヶ月は経過するのに、三葉は相変わらず彼からの不意打ちのキスに弱い。
 さぁて、仕事だ仕事だと手早く出勤準備をはじめる琉を前に、今日の店番は午後からだからとベッドでシーツにくるまったまま微睡む三葉。
 そんな彼女の耳元へ唇寄せて、琉は甘く囁く。

「――ホワイトディも、覚悟しとけよ?」
「う、ん……」

 とろんとした表情で応えれば、わかってないだろ、と琉が呆れたように微笑する。ホテルの室代とご飯代に使って、と一万円札を三枚ほどベッドテーブルに無造作に置いてから、シーツにくるまったままの恋人の髪を一撫でして、名残惜しそうに声をかける。

「じゃあ、行ってくるからな」
「ん……行ってらっしゃい」

 昨夜はバレンタインだからと当直のシフトをずらしたのだと悪戯っぽく教えてくれた恋人のことを想い、三葉は夢見心地で彼を見送る。
 パタン、と扉が閉まる音とともに、ふたたび睡魔に襲われた三葉は、去り際の彼の物騒な言葉のことを、すっかり忘れてしまうのであった……



 ――ホワイトディ「も」覚悟しとけよ?




《to be continued……?》
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