劇薬博士の溺愛処方

* 4 * 苦くて愛しいこの味は




 大倉琉は医大を出た後、そのまま大学院に進学して博士号を取得したという若手医師にしては珍しい経歴を持つ。
 実家が整形外科クリニックを営んでいる関係上、箔をつけるために博士号を取得しただけだと本人は口にしているが、博士号だけでなく学会が認定する専門医資格も手に入れており、いつ開業してもおかしくないと病院内でも噂になるほどだった。
 ただ、本人に独立志向はなく、両親が元気なうちは病院で働きたいと、三葉に教えてくれたものだ。

「もし家業を継ぐときが来たら、そのとき隣にいるのは三葉くん、君がいい」
「どうして?」
「ずっと君を愛でていられるじゃないか」

 当たり前のように応えられて、三葉は苦笑する。一目惚れ、の要素のひとつが三葉のすらりとした四肢と骨格であることは付き合い始めてから何度も思い知らされた。いまはそれだけではなく内面もすきだとしきりに愛を囁かれているが、軽薄そうに見える彼が口にすると嘘っぽく見えてしまう。

 ――そんな嘘っぽい口説き文句に絆されちゃうわたしもわたしだけど。
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