劇薬博士の溺愛処方
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「そ、そーろー……」
あれから仲直りはしたものの、恋人からの「早漏」発言にショックを受けた琉は、職場にいる合間もどよーんとした空気を背負って働いている。
いつもは飄々としている先生がこんなに落ち込んでいるなんて一体何があったんだ、周りのスタッフが何事かと詮索していても何のその、琉は患者の前では朗らかに診療を行い、診察が終わると同時に無気力になって溜め息をつくという器用な行動を繰り返している。
「大倉ぁー、魂抜けてるぞぉー」
「なんだ飛鷹か」
診察室の机でぐったりしている琉を気遣うこともせず、患者が座る椅子にちょこんと腰かけた琉と同じ白衣姿の飛鷹は、不機嫌な彼を前に、こそっと呟く。
「まーた薬剤師の恋人に逃げられたのかぁ?」
「違う……」
むすっ、とした表情の琉は、目の前の同僚の言葉を即座に遮り、首を振る。
「じゃあ、ケンカでもした?」
「してない」
「ふーん。でも大倉の機嫌が悪いときってあの三葉ちゃんが絡んでいるときだよね。転職したことで浮気でもされたとか」
「そんなめっそうも!」
真っ青な表情で否定する琉を面白がりながら、飛鷹は笑う。