劇薬博士の溺愛処方

 だが、それからひと月もしないうちに叔父が交通事故で入院して店頭に立つことができなくなってしまった。
 そのため急遽自分が店長代理として調剤室の外も担当することになったのだが、病院で処方箋に出されたお薬を淡々と準備するだけの仕事とは異なり、店頭で市販薬やサプリメントを前に説明したり販売したりする仕事は口下手な三葉の新たな試練になったのである。


   * * *


 ――今日は金曜日か……あぁ、気が滅入る。

 日用品も取り扱うような広々としたドラッグストアとは異なり、お客さんはカウンター越しにいる白衣の薬剤師と対面で会話をしながら薬品を購入する。三葉が店頭ではじめに行った作業は商品名とそれが置かれている場所を暗記することだった。
 見舞いに行った際に叔父は「三葉ちゃんの知らない商品もいっぱいあるだろうから勉強しろよ」と労いの言葉をかけてくれたが、実際に商品棚を見るまでは気にもかけていなかった。
 たいてい、叔父の馴染みの客がほとんどで、新顔の三葉が探すのに戸惑っていると、どこの棚に何があるのか教えてくれたからだ。
 けれど、そうでない客もいる。
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