劇薬博士の溺愛処方
彼に頭を撫でられたことなど、いままであっただろうか。背の高い三葉をあえていいこいいこするような奇特な人間はいままでいなかった。
――仕事中だから、あれでセーブしていたんだよね。キスくらい、してくれてもよかったのに。
頭をぶつけて居酒屋から救急搬送された恋人をたまたま診療することになった琉も驚いたことだろう。
あのとき琉の医療用携帯電話が鳴らなかったら、キス、していたかもしれない。
けれど唇を合わせてしまったら、きっとそれ以上のことを期待してしまう。
夜間外来のどこか仄暗い診察室で、医師と患者が身体を求めあう……その背徳的なイメージに自分と白衣姿の琉を重ねたところで、はぁ、と甘い溜め息をついていた。
シャワーを流した状態で浴室の椅子に腰かけ、泡のボディソープを手に取った三葉はそうっと自分の身体を泡で包み込んでいく。
ふわふわした泡が、首から肩、胸元へと流れていく。そして、恋人のことを考えていた三葉の指先は膨らみの尖端を摘まんでいた。
「……んっ」
彼のことを考えながら、自慰をしたことは何度もある。けれど、彼は自分を想いながら自慰をしてくれるのだろうか。