劇薬博士の溺愛処方
ちいさいけれど、精力剤の数ならどこの薬局にも負けない自信があるのだと叔父が偉そうに教えてくれたが、うら若き姪っ子薬剤師が精力剤を売りつけることになるとは考えていなかったのだろう、すこしだけ申し訳なさそうな顔をされてしまった。経営戦略として間違っているわけではないので三葉が文句を言う筋合いはないが、たしかに叔父の代わりに店頭で精力剤を販売しだした当初はお客さんに驚かれた気がする……
商売だから恥ずかしがってもいられない。二か月経ってようやく客とのやり取りも板についてきた。酔っ払いに絡まれても笑顔でかわせるだけの度胸もついた。精力剤についての知識も勉強した。それに、お店にやってくるお客さんたちを観察するのが楽しい。
新しい職場で三葉はようやく自分の居場所を見つけたと思っている。
時刻は午後八時五十五分。
ガタガタと音を立てながら自動扉が開き、金曜日の夜の最後の客がやってくる。
「いらっしゃ……え」
「やっぱり三葉くんだったのか」
――どうして彼がここに? わたし、黙って前の職場から姿を消したのに。
「探したからだよ」