劇薬博士の溺愛処方
クリスマス番外編・聖夜の靴下は博士の毒薬


 十二月二十四日。すっかり西陽の姿が消え、空の色が濃い藍色へと染まりはじめる午後の五時。
 クリスマスソングとイルミネーションの洪水を抜けて、ベージュのコートを着た三葉と黒いダウンジャケット姿の琉はいつものように新宿歌舞伎町を闊歩していた。
 なるべくいつものように、と心がけている三葉だが、足早に手を引っ張る恋人がニヤニヤ笑っているのを見てしまうと、顔が真っ赤に火照ってしまう。
 白い息をはきながら、大通りからすこし離れた場所にある隠れ家的なホテルに入り、部屋を取る。このあいだのような全面鏡張りのホテルはしばらく遠慮したい。ましてやこんな状況に陥っているいまはすこしでも落ち着ける場所の方がいい。
 無人のフロントには真っ白なLEDツリーが飾られており、オルゴールのクリスマスメロディに合わせて赤・青・緑へとコロコロ色を変えていた。
 ふだんなら微笑ましい装飾に心を和ませるであろうが、いまはそれどころではない。
 無言のままエレベーターに乗り込み、もじもじする三葉に、琉がダメ押しのキスをする。
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