白衣とブラックチョコレート

少女の絶望

「さっちゃん早く行って!!!!」

「っ……」

雛子の鬼気迫る表情に、幸子はやっと雛子達に背を向けて階段を駆け上がった。

「はぁっ、はぁっ!!」

今まで感じたことのない恐怖が幸子を襲う。一気に心拍数が上昇し、呼吸が上手くできない。

病み上がりだけが原因ではないことは、一目瞭然だった。

「誰かっ!!」

幸子は一息に階段を上ると、8Aと書かれた病棟への扉を開ける。

「助けてっ!! 雛子がっ……!!」

必死に叫びながら、ステーションに向かって走る。

「誰かっ……!!」



しかし、ステーションを前にして幸子は愕然とした。



「な、んで……」


ナースステーションは防火シャッターが閉じられ、しんと静まり返っていた。



「誰も……いない……?」



病棟内は看護師は疎か患者さえ、誰一人居らずもぬけの殻だったのだ。












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