人間を好きになった、魔界の王の娘
制服に着替えて悠翔君とも別れて
燿と一緒に家に帰ってきたあたし
家の前に立つとやっぱり怖いものがあって
ガチャとドアが開いたと思ったら
おば様と一緒に出て来たお母様
「奈未っ」
それだけで、抱きしめてくれたお母様
「兄貴には、こっちに止まるって伝えておくからちゃんと話しておいでよ」
「ありがとう」
悠翔君じゃなくて、燿が婚約者だったら
こんなにも寂しい思いをしなくても済んだのかもしれない
家の中に入ると、奇麗に片付いていて
「今日、魔界に帰るんだね」
「えぇ。もう、こっちには帰ってこないわ」
「本気でそれを言っているの?」
「勿論よ。凌にも同じことを伝えてあるわ」
お父様に伝えたと言うことはそれだけ本気なのだろう
「そっか」
「奈未。私が、こっちに戻ってきた日
確かに、体調が悪かったから
こっちに来たのもあったけど。
奈未と母と娘の時間を過ごしたかったのもあったのよ」
あたしとの時間・・・?
「何で、それを今更」
「そうね。きっと、奈未はあたしたちを
憎んでいるのでしょう?」
あたしが、憎む?
「あなたに魔力量が少ないのも
凌が勝手に決めてくる婚約者にも」
確かに。でもそれは
「魔力量が少ないから、あたしを毛嫌いしているのは
お母様やお父様でしょう?
勝手に決めてくる婚約が嫌だなんて、今に始まって事じゃないじゃない」
「そんな事・・・!」