人間を好きになった、魔界の王の娘

「だって同じ学校で、同い年なら一緒に行っても
違和感ないでしょ?
それに悠翔は、明日の大学の講義、午後からなんでしょ?」

へ?そんなのもあるの?

「うっせぇ」

そう、ぶっきら棒に答えている悠翔君


「そう言えば、何で奈未はここに来たの?」

「え?」

「だって、魔王の娘なら、ここの生活よりも良かったんじゃない?」

ここでの生活と?

「分かんない」

「あ?」
「え?」

「だって、この世界には今日来たばかりだもの。
だけど、魔王城にいた時よりも、この雰囲気はあたしは好き」

「そうか」

「あたしは、魔界で"1人"だった。
魔界で必要な魔力の量も、他の魔界の住人よりもはるかに少ないし
あたしは、魔界に弟がいるんだけど
魔界の血を色濃く継いだ弟にしか目をくれない両親。
使用人も、弟ばかりだった。
お父様は、一族反映にしか興味がないから
魔力の少ないあたしは、必然的に魔力量が多いインキュバスや
サタンといった種族と婚約させられそうになってた
魔王城で自由もない生活をしているようなものよ。
1人じゃないのに、1人でいるようなものだった」


「「!?」」

「だけど、お母様は泣いてくれたの。
あたしがここに来るときに、
味方でいてくれると。泣いてくれた」

「そう」

廻に向けてくれる目を、少しでもあたしに向けてくれてたら
少しは違った未来だったのかな

「奈未ちゃん。ここにいる間は
あたしたちが親代わりをするわ。
だからいつでも頼ってきなさい」

「でも・・・」
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