人間を好きになった、魔界の王の娘

あたしがここを出ていく前に手を打ってきたと言うことなの?

「ごめん。誰に何を言われてもあたしは構わない。
だけど、やっぱり魔界で、この国で婚約も、成婚(せいこん)も出来ない」

「何故ですか」

「おやめなさい」

「奥様」
「お母様」

「あの人が行っている婚約は一族の繁栄と言うことでしょう?」

「はい。ですから、廻様にも、そして奈未様にも婚約をして、成婚をしていただきます」

「なら、廻でも大丈夫でしょう?どうせ、あの人にだって
側室がいて、側室に子供を産ませているのだから
廻も奈未も自由にさせてやりたいわ」

「お母様?」

「奈未。私たちに構う必要はないわ。
行きなさい。貴女の思う場所に」

「ありがとう。お母様」

そう言うと、自室に戻ったあたし。
婚約者で、このこの世界のこの国の王女であるあたしが
ここにいなかったら、どんな反応をするのだろうか?
きっと、無理やりにでも連れ戻そうとするのだろうか?
お父様にならそんな事やりかねないかもしれない。
でも、お母様は、あたしの思うようにと言ってくれた

この魔界に生まれて16年。
お母様のいた人間界では、1年に1度年を取ると。
この魔界とは違う。1年で2歳年を取る魔界の秩序とは

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