人間を好きになった、魔界の王の娘
5
その日の夕方だった
「奈未っ」
え?
取り込んだ洗濯物を畳んでいた時だった
お母様の声が聞こえたのは
「どうして」
お母様と暫く暮らせと言われたのは昨日
そして、いつ来るか分からないはずのお母様は
今、目の前にいる
「凌が、しばらくこっちに帰ってこいですって」
「どれくらい?」
「さぁ」
さぁって。自分の体調がどれくらいで良くなるか分かるでしょう?
「でも、凌もここに来たでしょう?
何で一緒に帰って来ようって思わなかったの」
お母様でさえ、この話なの?
「それとも、悠翔君に恋でもしてる?」
恋!?
そんなことある訳・・・
ある訳ないはずなのに
否定も出来なかった
それでも、恋なんてどういうものかも
あたしには、分からないのに
「それにしても、悠翔君は?」
「今日は大学だと思うけど。
お母様がいる間は実家に帰ってるって言ってた」
「えー。せっかく、悠翔君にも会えると、思ってたのに」
あたしよりも悠翔君に会いたかったんだ?