秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
「真帆?」

「うん。」

「どうした?」

「うん……。なんだかあっという間の夏休みだったなぁって思って。」

「そうだな。あっという間だな。明後日からまた仕事かと思うと気が滅入るよ。」

「うん……。」

夢のような楽しい1週間が終わる。
もしかしたら夢で明後日には覚めてしまうのではないかと思う。

「真帆。」

「うん…。」

「どうした?」

「うん。なんだか雅臣さんがここにいるって夢じゃないかなって思って。夏休み前には思っても見なかったの。雅臣さんとこんな関係になるなんて。でも会社が始まったら…。」

「会社が始まっても関係は変わらないよ。でも仕事中は名前で呼ばないけど。そこは社会人としてのルールだから。」

「変わらない?本当に?」

「もちろん変わらないよ。真帆は急にと思ってるみたいだけど俺にとっては急じゃない。ずっと真帆に声をかけつづけていたよ。振られてたけど。」

「それは……雅臣さんとご飯食べてるのが見つかったらみんなからどんな非難を受けるかと不安で。」

「でも行ってくれたからチャンスが生まれた。ターニングポイントだったんだ。だから営業としてはチャンスは逃さない。」

「優秀な営業マンですもんね。」

「公私共に。」

雅臣さんは私を支え、目線が合うところまで引き上げてきた。
目が合うとどちらからともなく自然と唇を重ねた。
私の口が少し開いたのを見逃さずに雅臣さんは入り込んでくる。

「真帆。心配しなくていい。俺には真帆だけだから。」

耳元で囁かれる。

「真帆。愛してる。」

私は何も言えず、頭を上下に振り頷く。
こんなに人を愛おしく思ったことはない。
私も雅臣さんを愛してる、そう言いたかったが声にならなかった。

耳元で囁かれる雅臣さんの言葉は私のお腹を疼かせる。

雅臣さんに触れられる身体は熱くなり私の身体を敏感にさせる。

雅臣さんに紡がれる言葉とこの行為は私の心を満たしてくれる。
気持ちいい。

雅臣さんは?

雅臣さんは私の中で苦悶の表情を浮かべている。私が差し出した手を見ると笑い、指を舐める。
雅臣さんの欲が私の中で吐き出され、汗ばむ身体は密着しあっていた。
雅臣さんの身体は私に吸い付くようだった。

「雅臣さん。私も雅臣さんを愛してる。」
< 103 / 182 >

この作品をシェア

pagetop