秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
「私が産んだかの様に思って見守ってきたんです。でももう毎日の様に会えないなんて…。私の子供の様に見守ってきたのに…。」

私は涙が止まらない。
なんでこんなことを課長に話したのかさえよく分からなくなってきた。

課長はオロオロし始めたがやがて私の頭を撫で始めた。

「杉原がともくんを可愛がってることはよくわかったよ。でも偉いな、友達の幸せを祈ってあげられて。偉かったな。」

「うわーん…。だって、だって仕方ないじゃないですか。ともくんと血の繋がった父親なんですもん。私がいくら思っていても血のつながりには勝てないんです。」

「そっか…そうだな。」

「私も子供を産んでおけば良かった。」
もう泣き上戸すぎて歯止めがきかず、思ったことが次から次へと口に出してしまう。

「今から産むのはダメなのか?」

「相手がいないので結婚もできません。それに相手がいないから子供も産めません。なんてこと言わせるんですか……。酷い…。」

「分かったよ。悪かったよ。さ、もう飲み過ぎだ。帰ろう。オヤジお勘定して。」

「はいよ。なんだかお嬢ちゃんは疲れてるんだな。こんなに可愛いのに自覚ないなんて。」

「そうみたいだな。ってもう寝てるじゃん。」

「雅臣、タクシー呼ぶか?」

「それしかないか…。杉原はいい奴なんだよ。仕事も丁寧だし面倒見もいいし。なのにこんなこと思ってるなんて思いもしなかったよ。」

ここのオヤジは友達の父で昔からの知り合いだ。美味しいのはもちろんだが店のことは騒がれたくないから誰も連れてきたことはなかった。
でも今日何故か杉原を店につれてきたくなった。

「なんだか不憫だな。よくみていてあげろよ。」

「分かってるよ。ご馳走さんでした。」

「はいよ。またお嬢ちゃん連れてこいよ。」

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