秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
歯磨きするため一度離席し、戻ろうとしたところで雅臣さんに手を引かれ物陰に連れ込まれた。

いきなりキスをされ、私は驚いてしまった。

「ま、雅臣さん。ここ会社!」

「ごめん。我慢できなくて。昨日も連絡できなかったし。」

「私もすぐ寝ちゃって。ごめんなさい。」

「真帆は悪くない。俺がヤキモチ妬いてるだけ。」

「ん?どうして?」

「橋本や佐藤とご飯食べてるから。」
 
「たまたま会っただけなのに?」

「でも堂々と食べやがって。」

「ふふふ。さ、もう見つからないように戻りますよ。」

「真帆は余裕だな。」

「そんなことないです。でも見つかることの方が私には怖いことなので…。」

そう。
どこで女子社員が見てるかわからない。
ただでさえ雅臣さんの下で働いてるのは居心地が悪いんだもの。これ以上悪くなるわけには行かない。

私は雅臣さんから離れ慌てて席へ戻った。

隣の席の橋本くんに「顔赤くない?」と言われドキッとした。
鋭い…。

「そう?今日も暑いからかな?冷たいものでも飲まなきゃ。」

私はそう言いながらタンブラーのアイスコーヒーを飲んだ。
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