秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
ふと千佳に連絡をしてみた。

するとすぐに電話をかけてきてくれた。

『真帆?今大丈夫?』

『うん。千佳平気なの?』

『うん。智也は寝てるし、昌也も当直なの。』

『そっか。』

『どうしたの?付き合うことになったっていわなかった?あのイケメン課長さんと。』

『うん。楽しい夏休みを過ごしたの。でもね…なんだか夏休みが終わったらちょっと…。』

『そっかぁ。何があったの?』

『うん…課長はいろんな人と付き合ってただろうし私は自信がなくなって泣いたことがあったの。呆れられるんじゃないかって不安になって。』

『うん。』

『でも私を慰めてくれたの。で、私に自信を持たせてくれたの。だから私救われたの。彼もね、私が同僚と仲が良くて羨ましい、ヤキモチ妬きそうって言ってたのを知ってたのにいつもと同じように同僚と食事に行ったの。それが悪いことだとは思わなかった。』

『悪いことではないと思うよ。同僚も大切だもん。』

『うん。彼もそれはわかってる。だから前もって話すなりすべきだったなって。みんなには付き合ってるって言えないからこそ私がもう少し気をつけるべきだったよ。いつもみたいに同期と絡んでるのも見ていて、間に入れない空気を感じて自信がなくなるって言われちゃった。同期と彼とは全く違うのに。ねぇ、千佳。どうしたらいい?私は彼が好きなの。私から彼を嫌いになることはない。』

『それを伝えたらいいんじゃない?』

『でも…あの日から出張に行っちゃってメールしてもそっけない返事しか来なかったの。』

『いつ帰ってくるの?直接話した方がいいよ。』

『明日…午前中には東京に戻る予定なの。』

『じゃ、彼のマンションに行ってみたら?すれ違いは時間が解決してくれないよ。早く動かないと知らないうちにもっと溝が大きくなるよ。真帆には後悔して欲しくないな。』

『うん。彼が好きだから怖い。でも…このまま溝が深くなりそうなのは分かるの。』

『分かるよ。怖い気持ち。でもさ、怖がっていても進まないよ。大丈夫。何かあっても私と智也がいるよ。真帆は1人じゃないよ。』

『千佳、ありがとう。千佳、大好き。私、自分のこととなるとなんだか情けないね。』

『情けなくなんかない。みんな怖いもん。でもあと一歩踏み込むと違う世界が見えてくるよ。頑張れ、真帆!』

『千佳と話せて良かった。このままだと情けないけど諦めた方がいいのかなとかマイナスなことばかり考えるところだった。彼が好きだから頑張ってみる。彼が私に伝えてくれたみたいに私も彼に伝えてみる。』

『それでこそ真帆だよ!私も真帆のこと大好きだからね!』
< 116 / 182 >

この作品をシェア

pagetop