秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
『真帆?』

『雅臣さん?』

『ごめん、今出かけてる?』

『……今……雅臣さんの家の前にいて……。』

『え?どうして?』

『…ごめんなさい。勝手に待っていて。』

『…いや、そういう意味じゃない。えっと…実は俺も真帆の家の前にいるんだ。』

『え?えぇー?』

『出張から帰ってそのまま真帆の家に来たんだ。このままじゃいけないと思って。』

『私もこのままじゃいけないと思って出張から帰るのを待ってました。』

『このまま待てるか?俺、今駅に戻ってタクシー拾うところだから待ってて。』

『はい。』

電話は切れた。

まさか雅臣さんがうちにいたなんて。

私たち同じことしてた。

お互いこのままじゃいけないって思ってた。
まだチャンスはある?

早く雅臣さんに会いたい。

私は居ても立っても居られず生垣から立ち上がった。

通りに立ちタクシーが来るのを待つ事30分弱。

それらしきタクシーが近づいてくる。
マンションの前に止まると雅臣さんがタクシーから出てきた。

「雅臣さん!」

そう告げたと同時に私はふらっとして座り込んでしまった。

「真帆!」

タクシーの中から運転手さんも飛び出てきた。

「大丈夫か?病院に行こう。」

「大丈夫です。ちょっとふらっとしただけですから。」

「お客さん、大丈夫ですか?」

「すみません、運転手さん。私が彼女を支えるので荷物をお願いできますか?」

「もちろんですよ。大丈夫ですか?飲み物買ってきましょうか?」

「ありがとうございます。スポーツドリンクを2本お願いします。後でお支払いします。部屋は302です。」

「わかりました。とにかく横にしてあげてください。私もすぐ伺いますから。」

雅臣さんは私を抱きかかえ、エントランスをくぐった。

私は雅臣さんに会えてホッとしたのか力が入らない。

「ごめんなさい。迷惑かけて。」

「迷惑じゃない。黙ってて。すぐ部屋に着くから。」

雅臣さんはエレベーターへ乗り込みすぐに部屋に連れて行ってくれた。

私を抱き抱えたまま部屋は入り、ベッドに横にされた。

すぐにクーラーをかけ、身体に保冷剤を当てられた。

「真帆。顔が赤いから熱中症だろう。どれだけここにいたんだ?」

「お昼前から?」

「なんでそんな前から。連絡してくれたら良かったのに。」

「ごめんなさい。」
私は涙がでてきてしまった。

「悪かった。責めてるわけじゃないんだ。こんな暑い中待っていたのかと思うと真帆の身体が心配なだけなんだ。」

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